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「アンタはいったい……」
百道は、青年に尋ねる。
すると青年が答える。
「僕かい?僕はそうだね。
さすらいのクレープ屋かな」
「ちょっと待て……
アナタの顔知っている」
健太が、そう言って青年の方を見る。
「あ、君はお客に来たことがあるね」
「確か橘 吾郎さん。
凄腕のカリスマクレープ屋!」
健太がそういうと百道が驚く。
「ええ!
勇者界のブラックジャックか?」
「なんだい?それ……
勇者界のブラックジャックって響きがかっこいいね」
「別名無免勇者」
健太がそういうと吾郎がため息をつく。
「それはちょっとダサいね」
吾郎が小さく笑う。
「五郎さん、助かりました」
灰児が、頭を下げる。
「いいよ。
僕は、営業のついでだから。
また遊びに来てくれたらそれでいい」
吾郎は、そう言ってメガネをクイっと親指でうえに上げた。
「ありがとうございます」
百道と健太が、そう言って頭を下げる。
「うん。
僕は、さすらいのクレープ屋さ。
ご依頼とあれば300円から全国どこにでも参上するよ。
では、皆さん。
今からクレープを焼くよ」
吾郎がそう言うと生徒たちが集まってくる。
「なにあれ?少しかっこいい」
女子たちが騒ぐ。
「さぁさぁ、よってらっしゃいみてらっしゃい。。
今日は、全種類ひとつ450円のところ300円で販売するよー」
吾郎がそう言って手を叩く。
すると周りにクレープ屋が現れる。
「どういう仕掛けだ?あれは……」
百道が驚く。
「吾郎さんの能力は召喚と収納だ。
どこにでも何かを収納できるし、それを召喚することができる」
「へ、へぇ……」
健太が驚く。
「チート級か?」
百道の言葉に灰児がうなずく。
「俺の知る限り吾郎さんの実力は、そのへんの勇者より強い」
「……灰児さんよりもか?」
百道がそう言って灰児の方を見る。
「当たり前だ。
俺ら勇者のトップクラスかそれ以上だ」
灰児が小さく笑う。
「さぁ、君たちもクレープを食べてくれよ」
吾郎が、そう言って3人にクレープを渡した。
「うまいな」
百道が小さく笑う。
「ああ」
健太も笑う。
みんなみんな笑う。
あたりが笑顔に包まれた。