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「ビビるな……
俺、ビビるな……」
百道がそう言って自分の腕を抑える。
健太もまた震えている。
「かわいいかわいい百道くん。
そして、かっこいいかっこいい健太くん。
あなたたちの能力は、役に立つからテオスに来ない?
断れば殺すけど……メリットはたくさんあるわよ。
いつでもどこでも好きなときに女の子を抱けるわよ。
あなたたち思春期の子からしてみれば嬉しいことでしょ?」
クレイジーが、嬉しそうに笑う。
「無理やり抱くことに意味なんかない!
童貞舐めるな!」
百道が勇気を勇気を振り絞って出た言葉がそれだった。
「ふーん。
健太はどうなのかしら?」
クレイジーが、ゆっくりと健太の方を見る。
「俺は誰かの下につく気はない!」
するとクレイジーが大きくため息を吐きながら言った。
「オーケー。
じゃ、こうしましょう。
私が、百道を殺して健太も殺してモトフミさまに怒られましょう。
さぁ、死になさい」
クレイジーが、嬉しそうに笑う。
そして、人差し指を百道に向ける。
「硬化……
するしかないな!」
百道が、地面を蹴る。
百道の能力は、攻撃すればするほど硬くなる。
地面を蹴ることにより少しでも硬くしようと考えたのだ。
「きゃは!硬くしても意味ないわよ?
私は、魔族。
役立たずの人間と違って能力に制限がないから硬い部分を破壊すれば柔らかい部分が剥き出しになるのよ?」
クレイジーが、嬉しそうに笑う。
それはそれは嬉しそうだ。
「だったら当たらなければ問題ないだろう?」
健太がそう言ってクレイジーの背後に回る。
「気配を消して背後に回るのはいい作戦ね。
でも、声を出したら意味がなくてよ?」
クレイジーが、軽くジャンプする。
ヒラヒラのスカートがふんわりと舞う。
下着が見えそうになったため健太と百道は思わず視線をそらしてしまった。
「これだから、真面目な童貞はダメね」
クレイジーのそう言葉を放った瞬間には健太の後ろにクレイジーが立っていた。
「な?」
健太は驚く。
「きゃは、気づくの遅っ」
クレイジーは、健太の腹に一撃蹴りを浴びせる。
その隙を見つけた百道が、クレイジーの背後に立つ。
「うおおおおおおおおお!!」
百道の声にクレイジーが笑う。
「だーかーらー
声出したら意味ないって!」
クレイジーが、百道の腹部にも蹴りを入れる。
「……が」
百道がつらそうにうめき声をあげる。
クレイジーが、百道の額に人差し指を当てる。
「ぱきゅーん」
百道は死を覚悟した。
ああ、死ぬのか。
自分は死ぬのか。
死ぬってあっけないな。
そう思った。
しかし、死んでいなかった。
百道は、ゆっくりと前を見た。
そこには、膝をついているクレイジーの姿があった。
「俺のように素早く。
俺のようにエレガントに。
俺のようにスマートに攻撃しなくちゃダメだぞ」
百道は、その姿に見覚えがあった。
「……あんたは!?」
健太も驚く。
そこにいた青年。
それは、ですますスイッチのベース担当。
南野 灰児が大鎌を構えてそこにいた。
灰児の表情には余裕があった。
「自己紹介しなくてもわかるよな?
勇者が来たぞ!」
灰児は、クレイジーを見て嬉しそうに笑う。
「お前の魂を喰えば俺は更に強くなれるな」
灰児は、大鎌を構える。
「痛いわね。
でも、私の超再生の前にしてみれば、こんな傷なんてあっというまに回復よ」
クレイジーは、そう言って立ち上がる。
クレイジーの傷が癒えていく。
そして、あっというまに傷は塞がった。
「さぁーて、お前ら逃げるぞ!」
灰児の言葉に百道たちは、驚いた。