09
「気にしなくていいよ。
こっちこそ逃げてごめんね。
怪我とかしてないかな?」
「うん、大丈夫」
水谷さんは、小さな声で呟いた。
「にしても、おまえって美味しい展開が多いよな?」
友人である菊池信也が、僕に声をかけてきた。
「美味しいってなにが?」
「転校生の登校中にぶつかる。
これって、恋愛ドラマの王道じゃないか……」
「確かにそうだけど、現実は甘くないと思うよ?」
「まぁ、そうだよな」
「俺らモテナイ組みの人間には関係のない話だもんな」
1時間目の始まりのチャイムが鳴る。
菊池は、ため息を吐いてから、その場を去った。
あぁ、今日もだるい授業の始まりだ。
僕は、そう思うと睡眠体制に入った。