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「気にしなくていいよ。
 こっちこそ逃げてごめんね。
 怪我とかしてないかな?」

「うん、大丈夫」

 水谷さんは、小さな声で呟いた。

「にしても、おまえって美味しい展開が多いよな?」

 友人である菊池信也が、僕に声をかけてきた。

「美味しいってなにが?」

「転校生の登校中にぶつかる。
 これって、恋愛ドラマの王道じゃないか……」

「確かにそうだけど、現実は甘くないと思うよ?」

「まぁ、そうだよな」

「俺らモテナイ組みの人間には関係のない話だもんな」

 1時間目の始まりのチャイムが鳴る。
 菊池は、ため息を吐いてから、その場を去った。

 あぁ、今日もだるい授業の始まりだ。
 僕は、そう思うと睡眠体制に入った。

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