短編
「好きです。
付き合ってください!」
役の上なら言える。
だけど実際には言えない。
なんだろう。
このもどかしさは。
俺はこう見えてジャニーズに所属している山Pということになっている詐欺師、山上智久。
そろそろ足を洗いたい。
足を洗うか東京湾に沈むか。
どちらかだ。
そんなことを幼馴染で元AKB48の板野友美ということになっている詐欺師の板橋友美に相談した。
そしたらこんな回答が来た。
「東京湾で足を洗えばいいじゃん」
友美は、こう見えて石原さとみに似ている。
でも、俺は山Pには似ていない。
どちらかというと山里亮太さんに似てる。
まぁ、山Pだから間違いではないけど。
この詐欺をしだしてから罪悪感だらけだ。
だから俺には向いていない。
だから俺は決死の覚悟で上司に相談した。
「仕事辞めたいです」
すると上司から返ってきた言葉は、こうだった。
「死ぬか?」
だから、俺は胸をはってこう返した。
「仕事辞めたくないです」
情けない。
しかし、噂は広まるもので。
「山上、仕事辞めるってよ」
と言われ、俺は袋叩きにあうことになる。
そして、その毒牙は友美にも向けられる。
付き合っているからかな。
レイプされ顔をボコボコにされ入院している。
見せしめというやつだ。
どうにかして俺はこの会社に復讐したい。
だから、警察に犯行声明を出す勇気はないのでツイッターでつぶやいた。
俺は40分以内に666RTされなければ、芸能界パロで公衆の前で山Pを利用した詐欺事件について告白する。
リツイートなんて、この俺にはそんなにされないだろう。
だから、書いた。
決定事項だ。
告白する場所は、世界を股にかける空港。
関東空港だ。
俺は車を走らせる。
家族よ。
ごめん。
友美もごめん。
俺は組織を破壊する。
俺は関東空港のロビーに向かう。
そして、大声で叫ぶ。
「誰か助けてください!
俺は、詐欺師です!
詐欺組織の一員です!」
すぐに警備員が集まる。
なかには組織の一員もいた。
「こいつも詐欺師です!」
俺は、そいつを指差していった。
「俺はーー」
俺は大声で犯行の手口を全て吐いた。
そして、迷惑防止法違反の現行犯で逮捕された。
警察署内で俺は組織の全てを吐いた。
友美を守る方法をこれ以外に思いつかなかった。
これにより多数の自殺者を出したこの詐欺組織の幕を閉じた。
俺も逮捕される。
面会に来てくれた友美に鼻で笑われる。
「ばーか」
友美は泣いていた。
友美は警察から派遣された潜入捜査員だったらしい。
友美は俺と付き合うふりをして捜査していたらしい。
それが組織にばれ、見せしめにレイプされボコボコに殴られたらしい。
それでも思う。
友美が無事なのなら理由はどうでもいい。
俺は、それでも友美が好きだと。
心から思った。