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第48話 知識と仕組み






 ◆◇◆






 お祭り効果もあって、今日は開店初旬以来の完売でした!

「お疲れ様!」
「お疲れー」

 精算作業も掃除なども終えてから、セキュリティを厳重にかけて厨房でのんびりコーヒータイム。
 本当は自宅に戻ってゆっくりしたかったが、まだやる事が残ってるんです。

「あとはメンチカツサンドだけだねー」
「それだけでいいし、飲んだらパパッとやろ」

 エリーちゃんはカフェオレ仕立てのコーヒーをぐっと飲む。僕はブラックだけど、エリーちゃん実はブラックが苦手。勝気な見た目によらず、ちょっと可愛い一面だ。
 それはともかく、カミールさんからロイズさんの伝言をもらうまで、最低限の仕込み以外にも商業ギルド限定のロールパンサンドのメンチカツは仕込んじゃっていた。
 生地だけなら専用の冷蔵庫で保存はできるけども、メンチカツだけはタネを朝のうちに仕込んじゃったんです。

「あたし、パン粉作っとくからー」
「おねがーい」

 得意不得意分野は克服するようにしてるが、効率重視かつ早く休みたいので急ぎ足で取り掛かる。
 と言っても、揚げたりパンを焼いたりするのは明日の朝にするから、その手前まで。
 エリーちゃんがパン粉を作ってる間に、僕は大型冷蔵庫からガーゼ布を被せた大きなボウルを取り出す。
 寝かせておいたメンチカツのタネは、目立った変色もなくよく冷えてた。

「でも、ビニールとかがあればなぁ……」

 成形前にもう一度タネをこねながら、ぽつりと口に出してた。

「ビニール?って、ここを開く前にも言ってた?」

 もうパン粉が出来上がったのか、バッドに入れて持ってきてくれました。
 僕は頷くと、エリーちゃんもメンチカツの成形に加わってくれた。

「布や缶詰とかよりも、保存に適した素材?だっけ?」
「そうそう。紙だと水気を弾くのは無理でしょ? ビニールを使えばそれが出来て、あと乾燥も防げたり結構便利なんだー」
「紙でも、金属でもないのに水気を弾く⁇」

 想像しにくいのも無理ないけど、この世界で存在していないのを他で例えて説明するのも難しい。
 コンロや冷蔵庫、エアコンみたいなのは存在しててもほぼ全部が金属と木を使って再現されている。
 冷蔵庫の取っ手も、劣化しにくいように加工した木だからプラスチックじゃないんです。
 最新式、のでも昔おじいちゃんに見せてもらった昭和時代の家電タイプに近い。

「ガラス、とも違うんだけど……軽くって、ツルツルしてて、柔らかいから包装紙だったり保存容器もに加工とかなんでも出来るんだー」
「金属でも?」
「ないらしいねー?」
「下手したら、オリハルコンよりも希少価値がつくかもしれないよ」
「だろうねー」

 この世界では世間知らずな僕でも、ビニールやプラスチックの存在はチート素材だって理解はしてる。
 何にでも加工出来て、ほぼ全ての食材を少しでも長く保存出来ちゃう。石油が存在するかはわからないが、専門家じゃないから異世界人の僕でも作れない。

「あればすっごく楽になるんだけどー」
「けど?」
「街中や郊外でゴミ問題が出来ちゃうんだよ……」
「燃やせばいいんじゃ?」
「専門の焼却場があればいいけど、燃やすと有毒ガスが出ちゃうんだって」

 もし仮に作れたとしても、薄いフィルム素材の場合処分しようにもそれが問題となってくる。
 日本でも、十数年以上かけて焼却場の仕分けを色々出来るようにしてきたとかはテレビで見ていた。
 この世界じゃ、ゴミ焼却炉はあっても割と外でそのまま燃やすそうだから、ビニールを燃やせば職員さんが直接煙を吸い込んじゃう。
 おまけに、空気にも溶け込んじゃうんで環境汚染の原因にもなるそうだから。全部、学校で習ったことだけどね。

「……なるほど。便利でも、欠点は下手したら禁じ手の魔法や魔術並みの被害が予想される、か」
「今のままでも、問題はないだろうけど……サンドイッチとかが乾燥しやすいからさ?」

 開店ギリギリに仕込んで、薄い紙で全体を包んでなんとか中身が見える程度の包装。
 他にも、生物に部類されてるのは似た方法で販売してるけど、見栄えも味の劣化も早い。
 クレームは今のところないけど、きっと妥協してくれてるはず。そこを改善したいんです。

「たしかに。そこは気になるときりがないしね……あ、これで終わり」
「ありがとうー」

 衣をつけるのも同時進行で進めてたので、受け取ってからすぐにつけてバッドに。
 これにもラップはないから、ガーゼ布で包んで冷蔵庫に。冷凍庫もあるにはあるけど、タッパーやジップロックとかもないのであんまり食材を冷凍にはしてない。
 それと、明日の朝揚げちゃうから冷蔵庫で十分。

「ねぇ、僕以外の時の渡航者さんとかってビニールとかプラスチックは伝えてこなかったんだよね?」
「まず、頻繁に来ることがないし……アシュレインじゃたしか200年ぶりだったかな?」
「そうなの?」
「魔術師の地とは言われてても、時の渡航者が来るのは地方の街じゃあんまりないみたい。大抵は、どの国でも王都付近が伝承じゃ多いし」

 もし、あの裏口から繋がったゲートが王都に繋がってたら、今頃僕はこの前来た王様と関わってたかもしれない。
 ちょっとだけ不安になったけど、今ある生活で良かったと思えた。

「でもそっかぁ。王都に行ってたら勇者になってーとか言われても僕そう言ったチート特典ないし」
「チート? 特典?」
「んー、僕が住んでた国のおとぎ話みたいなのだけど……異世界に飛ばされたり、転生したらその世界の神様から加護とか色んな能力を与えてくれる?だったかな。それが特典で、チートって言うのは予想以上に強い能力」
「攻撃性はなくても、スバルのも充分だと思うけど……」
「それは思ってます」

 魔法が多少でも使えるとか、錬金術のような事が出来るとか充分チートだもの。

(幼馴染みに借りた本にあったのは、もっと過激だったけど)

 魔物倒して成長するとか、ゲームでも不得意分野だったからほんと無くて良かった。
 後片付けも終わって、仕込みのチェックなども確認し終えたら、何故か考え込んでたエリーちゃんが急に手を叩いた。

「そうだ!」
「どーしたの?」
「スバル、ロイズさんに見てもらった魔法適性……少しやり直そう」
「へ?」

 言ってる意味がよくわかんなかった。
 首を傾げてたら、エリーちゃんは指を立てて、先にロウソクのように青い炎を出した。

「生活に使う程度の魔法は扱えても、この前襲撃されかけた事が今後もなくないでしょ? 自衛のために、体術は徐々に稽古するにしても防衛魔法が使えれば少しは違ってくる」
「えっえっ?」
「明日は遊ぶけど、明後日から数日は休業日だし訓練場に行こう!」
「えぇえ⁉︎」

 僕を無視して、何故か予定が決められちゃいました⁉︎

「わ、わからなくもないけど、なんで魔法?」
「腕力は多少あっても、スバルの攻撃って多分軽いから」
「うう……」

 図星を突かれたら、ぐうの音も出ません。
 この間のは、たまたまジェフがいて例の槍を持たされたからなんとかなったけど、この先を思うとエリーちゃんだけじゃ対処出来ない場合も想定される。
 ジェフのように格闘技は出来なくても、結界を最低でも張れたら違ってくるって。
 あとは、こっちの中学生くらいの子達が使える簡単な攻撃魔法とか。
 そう言ったのを、もちろんロイズさんやルゥさんに相談してから訓練場で実践することになりました。

「じゃ、訓練はとりあえず。ご飯の支度はほとんどしといたから戻ろ」
「え? いつの間に?」
「締め作業してる間。今日は、ちょっと頑張った」
「なになにー?」

 連絡通路を歩きながら会話してたけど、家の方に近づくにつれていい匂いがしてきた。

「レイシーさんや君のお母さんには負けるけど、ミートパイ作ってみた」
「ありがとう!」

 カッコよくて、可愛くて綺麗な同居人の料理の腕がどんどん磨かれてきてるので嬉しかった。
 どういたしまして、ってエリーちゃんが微笑んでくれると……何故だか胸がドッキドキに。
 可愛い笑顔に胸を貫かれた気分です!

(ドキドキで思い出したけど、ジェフの方はどうなったんだろう?)

 あと、ジュディちゃん達の方も気になった。
 カイト君も彼女と仲良くお手手繋いでたし、絶対好きなんだろうなぁ……。





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【パンの包装について その1】


日本じゃ、スーパーにコンビニ、パン屋さんでもほとんどがビニール包装ですが……それが日本独自の習慣と言うのはご存知だったでしょうか?


パン王国のフランスや欧米では紙袋が基本。
バゲットの例を上げますと、紙袋で持ち帰り、その後は常温で保存が普通だそうです。


今回はバゲットのビニール、紙袋どちらが適してるかご説明させていただきます。


ビニールで包むメリットは、何より『丈夫さ』。
紙袋では、持ち帰るまで何かの拍子で破ける可能性。
また、水に弱いので雨などでふやけてもろくなることがあります。
パンに限らず、このデメリットは仕方ありません。

その点、ビニール袋は水に強く密閉性も紙袋よりあるため、パンの鮮度を落とさずに安全に持って帰るのであれば、ビニール袋の方が適しているのです。食べきれなかった分を保存する際も、ビニール袋ならホコリが入りにくく破れることもほとんどないため、入れたまま置いておくことができます。

ちなみに、冷蔵庫でパンを保存するとカビが付着して劣化が早く進んでしまうため、バゲットは室内か冷凍庫で保存しましょう。なお、常温では二日以内がおいしく食べられる期限だとされています。ビニール袋があったとしても安心しきってしまわないようご注意ください。

今回はここまでノ

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