童話
むかーし、むかし。
あなたが思っているよりもさらにむかし。
あるところに美しくて優しい娘がいました。
娘の名前は、シンデレラ。
シンデレラのお母さんは悲しいことに早くに亡くなってしまいました。
悲しくて毎日毎日泣いてばかりのシンデレラ。
泣いてばかりのシンデレラ。
そこで、お父さんは少しでも寂しくないようにと二度目の結婚をしました。
シンデレラには新しいお母さんとふたりのお姉さんが出来ました。
ところがこの人たちは、そろいもそろってお人好し。
新しいお母さんは、自分の二人よりうつくしいシンデレラをまるでお人形のように新しいドレスを与えました。
「まぁ、あなたはなんて可愛い子なんでしょう。
でも、可愛いだけじゃダメよ?
女は家事もできた方がモテるのだから!」
お母さんとふたりのお姉さんは、シンデレラに掃除、料理、裁縫に勉強。
いろんなことをシンデレラは教えていきました。
寝る布団はふわふわで、シンデレラの服はキラキラと輝いていました。
毎日温かいお風呂。
清潔でおとなしい女の子に育ちました。
そんなシンデレラは、まわりの男の子たちに「シンデレラが死んでらー」と毎日のようにからかわれていました。
かわいいかわいい妹をイジメる男の子たちを許さないのは少しおてんばの二番目のお姉さん。
「ちょっと!貴方たち!
よくも私のかわいいシンデレラをいじめてくれたわね!」
二番目のお姉さんの名前は、ドロシー。
シンデレラの倍の倍も美しいのです。
ドロシーは、思いっきり強く男の子たちを叩きました。
「魔女がイジメるー」
男の子たちは涙を流し逃げていきました。
そんなある日のこと。
お城の王子さまがお嫁さん選びの舞踏会を開くことになりました。
その招待状は、一番目のお姉さんであるカトレアのもとにも届きました。
「もしかして、お姉さん。
王子さまのお嫁さんになれるかもしれないわね」
ドロシーが、カトレアにそういうとカトレアは言いました。
「そんなことないわよ。
私よりもかわいくてきれいな娘たくさんいるわ」
カトレアは、わんぱくなドロシーとは違いおとなしくひかえめな女の子でした。
でも、カトレアの美しさはドロシーの倍の倍以上も美しいのです。
そんな、カトレアの舞踏会の準備のお手伝いをしたシンデレラは、自分が幼いために呼ばれなかったことが悲しくて悲しくて泣いてしまいました。
招待状がないシンデレラは舞踏会どころかお城に入ることも許されません。
カトレアを見送ったあとシンデレラは、ひとり部屋に戻ると涙を流しました。
「ああ、私も舞踏会行きたいわ。
王子さまにお会いしたいわ」
すると、どこからか声が聞こえました。
「泣くのはおよし、シンデレラ」
「え……?だれ?」
するとシンデレラの前に妖精の姿をしたドロシーが現れました。
「シンデレラ、あなたはいつもお手伝いを頑張る、とても良い子なんですね。
そのごほうびに私が舞踏会に行かせてあげましょう」
シンデレラ―は、ドロシーに尋ねます。
「姉さん本当?」
「私はドロシーではありません。
妖精ですよ。
私は妖精だからどんな願いも叶えれるのです」
ドロシーはそう言ってシンデレラの前に1枚の招待状を渡しました。
それは、ドロシーが貰った招待状でした。
ドロシーは、王子さまに憧れるシンデレラに気を使って舞踏会には行かなかったのです。
そして、自分の招待状をシンデレラに譲ることを決めたのです。
「あ、これはもしかして……」
シンデレラは、ドロシーの顔を見ることが出来ません。
「シンデレラ、これで舞踏会に行くことが出来るわ。
余所行きのドレスに着替えて行くのです!
でも、12時までには戻ってくるのよ。
お母さまにバレたら怒られちゃう」
「ありがとう!
姉さん!」
シンデレラは、ドロシーにお礼をいうと服を着替え走ってお城に向かいました。
残されたドロシーは、小さく呟きます。
「ドロシーじゃないよ。妖精よ」
シンデレラには、その声は届きません。
ドロシーは、小さく涙を流しました。
「私も行きたかったな。
お城……
見たかったな、王子さま」
でも、ドロシーは涙を拭って誰も居ないのに笑顔を作りました。
「でも、シンデレラがあんなわがままをいうのは珍しいの。
私は、お姉ちゃんだから妹のしあわせを祈らなくちゃ。
頑張ってね!シンデレラ!」
ドロシーは、星に願いを託しました。
さて、お城に大広間にシンデレラが現れると、その可愛らしさにあたりはシーンと静まりかえました。
シンデレラに気づいた王子さまは、言いました。
「僕と踊っていただきませんか?」
そういって王子さまはシンデレラの前に進みます。
シンデレラは、ダンスがとても下手でした。
下手で下手で下手で、自分の惨めさにまた泣きそうになりました。
「ゆっくり、ゆっくりでいいよ」
王子さまは優しい口調でそう言いました。
そのためか、時間はあっという間に過ぎました。
シンデレラが気がついたとき。
時計の針は12時の15分前だったのです・
「あ。ごめんなさい。
王子さま。おやすみなさい。
私帰らなくちゃ」
シンデレラは丁寧にお辞儀すると急いで大広間を出ていきました。
「ちょっと待って……」
王子さまは、シンデレラを呼び止めようと追いかけました。
しかし、それをカトレアが止めました。
「王子さま、よ、よろしければ。
わ、私と踊っていただけませんか?」
カトレアは、震えながら言いました。
カトレアはシンデレラの存在に気づきずっと見守っていたのです。
カトレアは美しく賢い娘でした。
シンデレラの12時の門限のことも知っていました。
それで夢のような時間を壊してまで去ろうとしたことも気づいていました。
それでも、シンデレラのことを忘れることが出来ない王子さま。
お城の兵士にシンデレラのあとを追わせましたが。
残ったのはシンデレラが脱ぎ落としたガラスの靴のみです。
そして、王子さまは王さまに言います。
「僕はこのガラスの靴を履いた女の子と結婚したいです」
次の日からお城の使いが国中を駆け回り、手がかりのガラスの靴が足にピッタリ合う女の子を探します。
お城の使いは、シンデレラの家にもやってきました。
「さぁ、貴方たち。
この靴が足に入れば王子さまと結婚よ!」
「は、はい……
お母さま」
カトレアとドロシーは、靴に足をぎゅうぎゅう押し込みましたが入りません。
シンデレラは部屋に奥に隠れました。
「残念ながらこの家には昨日の娘はいないようだ」
そう言ってお城の使いが帰ろうとしたとき、母親が言いました。
「シンデレラ。
あなたも試しに履いてみなさいな」
それを聞いたふたりのお姉さんは、冷や汗をかきました。
「な、なにをバカなことを言っているの?
シンデレラがこの靴の持ち主のわけないじゃないの……」
カトレアが、そう言うとドロシーも続きます。
「そうよ、お母さま。
シンデレラは、あのとき私と留守番していたのよ?」
「そうですね……
招待状一覧には、シンデレラという名前はないですねー」
お城の使いがそう言うと母親は言います。
「まぁ、いいじゃない?。
こういうのも経験だよ」
母親がそう言うと奥の部屋に隠れたシンデレラを引っ張ってきます。
「まぁ、いいでしょう。
履いてもらえますか?シンデレラさん」
シンデレラは、母親に内緒でお城に行ったことがバレると怒られると思い。
泣きそうになりながら靴を履きます。
「あ……」
シンデレラの足はそのガラスの靴にピッタリと合います。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
シンデレラは、目に涙を流します。
それを見たドロシーがシンデレラを庇います。
「違うの!私が悪いの!」
ドロシーは、そう言って事情を説明しました。
カトレアも一緒に謝りました。
「事情はよくわかりました。
でも、シンデレラさん。
もう一度お城に来てくれませんか?」
お城の使いが、そういうとシンデレラは言いました。
「いいんですか?
私、嘘をついたんですよ?」
お城の使いは、ニッコリと笑います。
「王子はそんな小さなこと気にしませんよ」
シンデレラは、母親の方を見ます。
「もう一度言ってみたらどうかしら?」
母親は優しい目で言いました。
「でも、私嘘をついて……」
「じゃ、そのトキメキは嘘?」
母親の言葉にシンデレラは首を横に振りました。
「嘘じゃないわ。
私、王子さまのこと一目惚れしちゃったみたい」
シンデレラの言葉にお城の使いは言います。
「では、王子にこのことを報告しますね」
お城の使いは、敬礼をしたあとお城に戻りました。
その日の夜。
シンデレラは、ふたりのお姉さんと一緒の布団で眠ることになりました。
「私、王子さまと結婚するの?」
シンデレラが、ふたりのお姉さんに尋ねます。
「そうなるかもしれないわね」
カトレアがそう言うとシンデレラの胸は不安でいっぱいになります。
「私みたいな子が王子さまの嫁さんになってもいじめられない?」
するとドロシーは言います。
「シンデレラをイジメる人はみんな私がやっつけてやる」
「ホント?ホントにホント?」
シンデレラの胸は不安に押し潰れそうになりました。
「ほら、泣いたらきれいな顔が台無しよ?」
カトレアが、そう言ってシンデレラの目に浮かぶ涙を拭いました。
そして、シンデレラを真ん中にして3人手を繋いで眠りました。
朝が来ます。
新しい朝が来ます。
シンデレラは、王子さまとすぐに結婚することになりました。
シンデレラは、いじめられることもなく王子さまのあたたかい家庭を持ちました。
そして、ドロシーはパン屋の店主の息子と結婚し。
カトレアは、喫茶店の息子と結婚。
3人いつまでもいつまでもしあわせに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。