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執事コンテストと亀裂㊺




結人は今もなお、赤眼虎のリーダーを目の前にしていた。

―――どうして藍梨がこんなところにいんだよ!

真宮が藍梨のところへ行ってくれたみたいだが、実際真宮の姿も藍梨たちの姿もこの目で見ていない。
後ろがどういう状況になっているのか、今の結人には当然分からなかった。
「ぜってぇに負けねぇ・・・。 俺たちは今日、勝ちにここへ来たんだ・・・!」
何度攻撃をしても、相手は負けじと立ち上がってくる。 先刻から結人も男の攻撃を全て避けているわけではなく、何度か食らったりしていた。
一番最初に食らった左肩の痛みもまだ引かない。 そのせいで、喧嘩に本気を出せずにいた。
「お前らなんかを、勝たせるわけにはいかねぇんだ・・・! そんな、ズルい攻撃で負けたとか認めたくねぇ!」
「・・・」
結人は黙って相手の話すことを聞いている。
「人を傷付けないチームが、横浜トップのカラーセクトなんて・・・絶対に認めねぇ! ・・・俺、言ったよな?
 お前らがこの攻撃の仕方を続ける限り、俺らは負けねぇって。 俺たちにはその攻撃が通用しないって・・・言ったよなぁ?」
「ッ・・・」

―――俺たちの誰かがお前らを傷付けるまで、お前は負けを認めないっていうことか。

「人を傷付ける練習をしてこいっつったよなぁ!」
そう言いながら、男は結人に向かって突進してきた。 相手が鉄パイプを振り下ろすタイミングを見計らって、その攻撃を自分が持っている鉄パイプで受け止める。
キツく睨んでくる男に、結人は冷静な口調で言い返した。
「人を傷付けて何になるんだよ。 人を傷付けても、いいことなんて一つもないだろ!」
「・・・周りを見てみろよ」
「・・・」
その言葉を聞いて相手の攻撃を抑えたまま、顔を少し左右へ向けて仲間たちのことを見回してみる。 

赤眼虎は既にボロボロになっていた。 いや、結黄賊は相手を無傷のまま無力化することができるため外見はボロボロではないが、相手は皆倒れていた。 
だが何度倒れても、結黄賊に食らい付いている。 そして結黄賊。 仲間は皆倒れてはいないが、見る限り相手から食らった傷が目立つ者が何人かいた。

「アイツらを見て何も思わねぇのかよ。 俺たちはお前らとガチの喧嘩をしにここへ来たんだ。 それなのに・・・お前らは俺たちと、本気で戦おうとかは思わねぇのかよ!」
リーダーのその発言に、結人は強めの口調で言い返す。
「だから、これが俺たちのやり方なんだよ!」
そう言いながらリーダーを思い切り蹴り飛ばした。 するとリーダーは呻き声を上げながら、その場に倒れ込む。 
だがまだ気力はあるらしく、倒れながらも結人に向かって怒鳴ってきた。

「そんなくだらない考えなんてもう捨てちまえ! お前らの喧嘩は喧嘩のうちに入んねぇよ! そんな喧嘩しかできねぇ奴らは、カラーセクトなんて名乗るんじゃねぇ!」

「・・・は? 今お前、何つった」

「だからー、カラーセクトを辞めろっつってんだよ!」

「ッ・・・」

―――は? 
―――いい加減にしろよ。 
―――お前・・・何を言ってんだよ。 
―――カラーセクトを辞めろって? 
―――それって、結黄賊を解散させろってことだろ? 
―――そんなことを言って・・・誰が許すと思ってんだよ。

結人は我慢の限界が来て、ついに怒りが爆発した。
「さっきから好き勝手言ってんじゃねぇよ! どうしてお前に言われて結黄賊を解散させなきゃなんねぇんだ!
 俺たちは喧嘩目的のカラーセクトじゃないってことは、何度もお前らに言ったはずだ。 勝手に俺たちを敵に回したくせに、俺たちのことを好き勝手に言うんじゃねぇよ!」
怒鳴り合っているうちに、周りはいつの間にか静まり返っておりここにいる彼らは結人たちに注目していた。 だがそんなことには気にも留めずに、結人は小さな声で言葉を呟く。
「・・・今日で、決着をつけるんだったよな?」
こんなことは、したくなかった。 

―――したくなかったのに・・・使わせんなよ。

「あぁ。 今日で決着をつける」
そう言って相手は立ち上がった。 それと同時に、結人は冷静な口調で言葉を発する。
「・・・悪いけど、俺たちの勝ちだ」
「は? 何を言ってんだよ」
「見ての通り、お前らはもうボロボロだろ。 これ以上、喧嘩を続けても無駄だ」
その発言に、相手は当然のように怒鳴ってきた。
「は!? 勝手に決着をつけんなよ! 俺たちはまだ、誰も気を失っていないし倒れてなんかもいねぇ」
「これ以上戦っても、お前らの身体はもう保たない。 ・・・だから、今から決着をつける」
「・・・?」

―――こんな手は、使いたくなかったのに。 
―――できれば使わずに、この決闘を終わらせたかったのに。 
―――なのにどうして、ここで負けを認めてくれないんだよ。

結人は拳に力を込めた。

―――今から俺は、結黄賊としては認められないことをする。 
―――みんな・・・ごめんな。 
―――でも、こうするしかないんだ。 
―――本当にみんな・・・悪い。

意を決し、結人は力強くその拳を横に突き出した。 その行為と共に、ある一人の少年が結人とリーダーのもとへ近付いてくる。
その少年は――――赤眼虎のリーダーの目の前に立った。 そして、ここからの時間は――――あっという間に過ぎる。

「「「ッ!?」」」

この公園にいる彼らは、今きっと皆同じ顔をしているのだろう。 思っていることも、きっとみんな同じなのだろう。
その少年は、赤眼虎のリーダーに向かって――――顔面に一発、自分の拳をめり込ませた。 ただ、それだけだったのに。 この行為は、いつもの結黄賊と変わらない。 
だが、ただ一つ結黄賊の喧嘩とは異なる点があった。 それは――――相手が今、顔から血を流しているということ。
口、鼻、そして殴る時に爪でも立てたのか――――頬からも血が流れている。 

そう、リーダーを傷付けた少年の名は――――コウだった。


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