私を好きにならない 私の愛しい人へ
私を好きにならない 私の愛しい人へ。
突然のお手紙。さぞ驚かれたことでしょう。
私の愛しい人。私は、あなたのことをずっと見てきました。
あなたの優しさに触れ、あなたから声をかけていただいた毎日を忘れません。
しかし、あなたは私を好きになることはないでしょう。
ましてや、この手紙の文面を考えたのが「私」だと認識することすらできないかもしれません。
でも、それで構わないのです。
この手紙があなたに届くとき。私の命は既になくなっています。
前述した通り、文章自体は私が作り上げたものですが、実際に文字を書くのは友人に任せました。
私と話すことができる稀有な友人に。
それほどのことをしてまで手紙を送った理由。
ひとえにそれは、私があなたと触れ合いたかったからでございます。
この手紙をあなたが読むことで、それが叶うのです。
お分かりになりませんか?
私は毎日、あなたから水をもらっていた「木」です。
そしてこの手紙は、私を元にした紙で出来ています。
どうか、私をあなたのそばに置いてください。
それだけで私は幸せなのですから。