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大きくて丸瞳、サラサラとした黒髪。綺麗な肌。プリッとした唇。
華奢な体。膨らみかけの胸。香ばしそうな臀部。か細い脚。
僕の中で声が聞こえる。一人の声じゃない。複数の声。
僕以外の6人の声。
_あぁ。雪菜。
_愛しい雪菜。
_君の腕をもぎたい
_君の腸(はらわた)を裂きたい
_君の苦しみに歪む姿を見たい
声は徐々に6つの、それぞれの人格を伴った主張へと変わっていく。
_どう殺す?俺は殺せれば良いぞ。やりかたは決めてくれ。
やめろ!
_絞め殺そう。醜い姿にこそ生命本来の美しさが備わる。殺人とは美だ。私に言わせれば、美しくなければ死に意味はない。
やめてくれ!
_いやバラバラに切り刻もう。そして食べるんだ。彼女と一体化すること。真の愛とはそういうもの。きっと美味しいに違いない。
出て行け。僕の頭の中から出て行け!!
_面倒だ。撃ち殺そう。ただの女。それ以上の価値はない。質よりも量だよ。
雪菜は特別だ。殺すなんてとんでもない!
_どっちでも良いよ。僕は僕。殺しても良いし、殺さなくても良い。
良くない良くない。殺しちゃダメなんだ!!
_なるほどいろいろ意見があるものだな。だが俺は、全部試してみても良いと思う。何度も何度も殺せば良い。
ふざけるな!ふざけるな!
頭の中の声は響き続ける。僕のものじゃない。いや、僕のものか?僕?俺?わたし?
そうだ。紛れもなく僕、七原一真の頭で考えている言葉だ。
でも、僕は違う。
僕は雪菜を殺したくはない。
_嘘をつけ。お前が一番殺したがっているんだ。