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第113話 西の誠に対する評価

「知力63、武力58」 

 誠でもさすがにここまでモブキャラ的扱いの数値をあてはめられるとカチンとくるところもあった。

「馬鹿だな、そっちじゃなくて妻の欄見てみろよ!」 

 島田は誠の首を抱えて画面に近づけた。そこには正妻がかなめ、側室にアメリアとカウラの名前が並んでいた。

「良かったな!モテモテじゃん!でも日野少佐のデータがねえな。日野少佐がこれを知ったら西を斬るだろうな。なんと言っても日野少佐は神前の『許婚』だからな。あの人も姉の西園寺さんの銃と一緒で刀を常に持ち歩いてるからな。西、首を洗って待ってろよ」 

 島田はすっかり元気を取り戻して笑顔のサラと一緒に笑った。だが隣で明らかに殺気を帯びている二人を見て誠は後ずさった。

「神前。お前って奴は……」 

「ひどい!私とは遊びだったのね!」 

 カウラとアメリアの殺気が部屋に充満した。

「いい身分だな、側室持ちとは。遼皇帝にでもなれるんじゃないか?そうだ、神前(しんぜん)と言う苗字は遼帝国の帝室の出だって言ってたよな。なっちまえよ、皇帝。今、あの国は皇帝が行方不明になって大変なんだから。丁度いいや」 

 そう言いながら島田からコントローラーを取り上げてかなめが検索を続けた。味方は誰もいないと気づいた誠はさらに後ろに下がりついに壁際に追い立てられた。

「オメー等馬鹿か?これは西の設定だろ?西の個人的な見解にどうこう言う必要なんかねーだろーが。それにうちで良く働いてる西がテメー等をどー見てるかって言う証拠だ。良い鏡だと思って反省しろ」 

 ランは興味のないゲームの話をされても少しも動じるところは無かった。

「西きゅんがこう見てるって事は整備の隊員が同じ事を考えているって事でしょ?」 

「そうだな」 

 ランの説得もむなしく怒れる二人は壁際に追い詰められた誠を威嚇していた。

「そのーあの、皆さん。謹慎を命じられたといってもこう遊んでばかりでは……」 

「良いんだよ」 

 コントローラーをいじるかなめは意外に落ち着いていた。いつもの彼女なら壁やドアにでも八つ当たりをするのではないかと思っていた誠だが別にそう言うわけでもなくただ面白そうに画面を眺めている。

「良いんじゃねーの?」 

 それを見ながら隣でランが西から取り上げたポップコーンを口に運ぶ。彼女なら嵯峨の副官としての仕事がこなせないことにストレスでも感じそうなところだが、そんな様子は一つも無かった。

 とりあえず士気は落ちていない。誠はかなめ達のそんな様子を見て少し安心した。

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