第92話 介入者の予感
「でも……僕達を監視しているって宣言してみせる意味が分からないんですけど」
そんな誠の言葉に一番に落胆した表情を浮かべたのはかなめだった。
「あのなあ、アタシ等の監視をしていると言うことはだ。いずれこの監視をしている連中の利害の範囲にアタシ等が関わればただじゃすまないぞ、と言う脅しの意味があるんだと思うぞ。実際、物理干渉型の空間展開なんかを見せ付けているわけだからな。どんな強力な法術師を擁しているか分かったもんじゃねえよ……本命の違法法術研究集団とは別の法術師をすでに保有している勢力があるってこった。恐らくそいつ等の法術師に関する技術はアタシ等が追ってる連中の上を行く……それだけは間違いねえだろうな」
モニターを見ながら首筋のジャックにコードをつなげながらかなめがそう言って苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「なんでこんなことしたんでしょう」
純粋に疑問を持った誠がそうつぶやいた。
「アホか?今の話聞いてただろ?脅しだよ脅し」
ようやくかえでからの開放感から落ち着いてきたかなめはそう言うと始末書の作成に取り掛かった。だが、誠は相変わらず首をひねっている。
「だって、ただ邪魔をしたいとか監視していることを知ってほしいなら、直接クバルカ中佐達に攻撃を仕掛ければ良いじゃないですか」
誠の何気ない一言にランが顔を上げた。
「そうか!カウラ、車は出せるか?」
「ええ、良いですけど……始末書は?」
「そんなものはどーでもいーんだよ!」
ランはすぐに立ち上がって背もたれにかけてあったコートを羽織る。カウラも呆然と様子を見ているかなめを無視して立ち上がった。
「どうしたんですか?」
心配そうな誠の声にランは満面の笑みを返す。
「そうなんだよ!アタシ等に直接攻撃を出来ない理由がある連中を当たれば良いんだ」
そう言ってドアにしがみついているかえでの肩を叩いてランは出て行く。それをカウラは慌てて追った。
「僕……何か言いました?」
誠は呆然と立ち尽くした。そしてランのひらめきの中身が何かと思いながら仕事に戻ろうとした。