第22話 東都警察での研究
「人体実験でもやっているのかねえ。東都警察も結構ヤバいことに手を出してるのかも……あ、そうださっきの死体。東都警察が作ったんじゃねえの?違法研究の為に」
かなめの無責任な言葉に茜が振り向いて棘のある微笑を浮かべた。かなめはそのまま後ろに引っ込みカウラの陰に隠れた。
ようやく人の気配を感じて誠達は安心した。しかし、研究者たちの表情は暗かった。
何かの人の為になる技術を開発していると言う前向きな研究はここでは行われていない。白衣の人々の顔を見れば誠にもその事実がありありと分かった。
「最近のここの研究は例の遺体の解析が主なものですわね。誰か法術に関する高い技術を持っている研究者の悪行の方法と、彼等が吐き出した汚物を研究する。ここの皆さんの心中を察してあげてくださいな」
誠の心を読んだように茜はそう言って静かに歩みを続けた。
「汚物ねえ……確かに人体実験に失敗した試験体なんて汚物だよな。研究者にとっては見たくもない存在。消えてほしい存在。それを捨てるには『租界』と言う一つの国が滅んだことで生まれた汚物人間の住む場所がちょうどいいって訳だ」
かなめは最初に見せられた遺体を思い出しながらそう言った。その言葉には感情と言うものが感じられないように誠には感じられた。
ただあるのは深い絶望だけ。ここで行われている研究がただ絶望を拾い上げるだけの作業なのだと悟って誠の心は次第に凍り付いていった。