78.はーちゃんの大きな反乱
「ウイークエンダーが何か狙ってる! 」
安菜が叫んだ。
当然、私はそんな操作はやってない。
それは、わかってるはず。
だけどウイークエンダーの頭部は、たしかに動いてる!
赤く塗られた、逆3角形の顔。
人の目のように左右に並んだカメラ。
その間の上、オデコに当たる部分に、大砲がある。
その砲身をおさめた、長くのびた後頭部。
ウイークエンダーのエネルギーを生み出す無限炉心と直結した、巨大で強力な大砲が。
「立ち上がってるよ! 」
安菜にまた言われた。
「は、離れて! 」
私が呼びかけると、安菜と一緒に来た道をかけ戻った!
もう、出入口のハッチははるか上。
「こうなったら、仲間のロボットに止めてもらうしかないよ! 」
私はそう言って、スマホの電話帳を・・・・・・開こうとした。
だけど画面は、カラフルなノイズが走ってた。
ええぃ! 意味がない!
思わず遅くなった逃げ足を、またすばやく動かす。
ふいに、金属的な音が聞こえてきた。
細長い金属をピアノのように弾く楽器、マリンバに似てる。
鈴のようにも聞こえる。
これは、ポルタ社の空港で聞いた。
MCOの音だ!
スマホから?
いえ、ウイークエンダーから?
もっと遠くからも聞こえる。
あわてて探す。
そこは、巨大な銀色があった。
MCOで作られた、ボルケーナ女神像。
そう言えば、ウイークエンダーが狙っていた場所は、あの女神像じゃなかったっけ?
『安菜さん、うさぎさん』
突然、男性の声で呼びかけられた。
『安菜さん、うさぎさん。
逃げる必要はありません』
聞こえてくる場所は、ついてくる?
私の手の中。スマホから?
「はーちゃん? 」
安菜も気づいた。
私たちは立ち止まった。
『ウイークエンダーを、借りてます。
これから、閻魔 文華を召喚します』
一体どうやって?
ああっ! さっき朱墨ちゃんにかかったニセうさぎの電話?!
『そうです。
MCOは、私のようなAIでも機械同士をつなぎ、コントロールできるネットワークになります。
それによって実行しました』
全身がゾワゾワする。
私は叫んだ。
「やめなさい!
そんなことをしたら、あなたは消されてしまうよ! 」
そうだよ。
こんな時のための規則なんかない。
でも、こんな事起これば、どうなるかわかる。
それが怖い。
あれだけ強大なMCOを、勝手に使われるわけにはいかない!
それに、はーちゃんを失うことも。
安菜が、食いつくようにスマホを覗き込んできた。
でも、できることはない。
映るのは意味のないノイズだけ。
『覚悟の上です』
はーちゃんの声は、落ち着いていた。
『これは、ゲコンツ星で作られたAIである、私のするべき仕事なのです。
あなた方の負担にならないよう、精一杯配慮します。
この事で、ゲコンツ星に対して不利益にならないよう、配慮をお願いします』
はーちゃん・・・・・・。
『もっと前に、こうするべきだったんです』
「ボルケーナ女神像が動いてる! 」
誰かが叫んだ。
ハンターキラーの誰かか、帰ってきた住民かが。
思わず女神像を見る。
翼を上に、両腕を左右に大きく広げている。
全身で受け止めるつもりだ。
『ごめんなさい。ごめんなさい・・・・・・』
はーちゃんの声が止まると、ウイークエンダーの頭から真っ白な光があふれだした。