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俺と彼女の意思

早速ギルドに登録を済ませた後、二人並んでクエストボードの前に立ち、依頼内容を確認してみましたが、
どれも低レベルなものばかりでした。
そこで俺は一つ提案してみることにしました。
それは、俺達二人の実力を確かめる為に簡単な依頼を受けてみようというものでした。
彼女は少し考え込んだ後で承諾してくれましたが、不安そうな表情を浮かべていることから緊張していることがよく分かるほどでした。
でも、それも無理はありませんよね、何しろ初めての経験ですから緊張してしまうのも当然のことだと思います。
なのでここは俺がリードしてあげようと思い彼女に声を掛けますと安心させるように微笑みかけてあげました。
そうすると彼女も安心したようで微笑んでくれましたので一安心といったところでしょうか?
そんなやり取りをしているうちに準備が整ったようですので、早速出発することにしたのですがその前に大事なことを忘れてました。
そう、彼女の名前を教えてもらってなかったんです。
このままでは不便なので、思い切って聞いてみようと思った時にふと、
彼女の胸のプレートを見るとそこには【フェンリッテ】と書いてありました。
あぁ、成る程! そういうことだったのか! 
つまり、彼女の名前を知ることが出来たのは、彼女が自ら名前を教えてくれたからだということがようやく理解出来た俺は、感無量でした。
そんなことを考えている内にいつの間にか目的地である森の前まで来ていたので、気持ちを引き締めて探索を始めることにしました。
まずは周囲を注意深く観察しながら慎重に進んでいくことにしましょう。
しばらく進んだところで不意に声を掛けられたため驚いて振り返るとそこにいたのは一人の少年でした。
その少年はどうやら冒険者のようでしたが、まだ子供っぽさが残っているように感じましたので、
もしかしたら見習いなのかもしれないと思いましたが、それはあくまで憶測に過ぎず本当のところは分からないままです。
まあ、それはともかくとして、俺達が最初に受けた任務はゴブリン退治でした。
早速探しに行こうとしたら少年が自分も付いていくと言い張ってきかないので、
仕方なく同行させることにしました。
そして遂に遭遇したゴブリン達は三匹でしたが難なく倒すことが出来ました。
それを見ていた少年もまた興奮してしまったらしく、次々に襲いかかってくるので苦労することになりました。
結局全て倒すのに時間がかかってしまいましたし、戦いが終わった頃にはかなり疲労困憊でした。
まあ、それもこれも全てはあの少年のお陰ですけどね!
おかげで凄いレベルアップ出来ましたよ!
そんな調子で依頼を達成できた俺達は意気揚々と帰還してギルドに報告しに行った後、報酬を受け取りました。
その額を見た俺は目を丸くしながら呆然としていたんですが、それは俺だけでなく隣にいる彼女も同じだったようです。
何せ二人で分けるにしても結構な額になりますからね。
まあ、それだけ俺の倒したゴブリンがレベルが高い相手だったってことかな?
そんな事を考えながら報酬が入った袋を掲げて喜んでいたところ、
背後から誰かに見られているような気配を感じたので振り返るとそこには誰もいなかったので
気のせいかと思い、そのまま宿に戻ろうとしたその時でした。
急に誰かの手が伸びているように感じた瞬間目の前が真っ暗になって意識が遠のいていってしまいました。
気がつくと見知らぬ部屋の中にいたのです。
そこでは一人の少女が待ち構えており、彼女は俺に語りかけてきました。
「貴方は選ばれましたわ! 私の世界を救う勇者として!」
と興奮した様子で捲したててきたのですが、俺は困惑してしまい何も言い返すことが出来なかったのです。
何故なら彼女の言っていることが全く理解できなかったからです。
それでも必死に聞き取ろうとしている内に段々と理解出来るようになってきたんですが、
その内容を聞いた途端驚愕する羽目になってしまいました。
というのも、俺が選ばれたというのは世界を救済する為の力を授けられているという事であり、
その力とは魔法を使う能力と戦闘能力を上げる効果がありますが、
おまけに俺が特殊な能力を持っている故にそれが更に強化されるとのことでした。
ただしその代償として、俺の記憶や感情などは全て封印される事になるらしいんです。
つまり今の俺の記憶は失われてしまうということになりますが、
その代わりに新たな人格が生まれることになるんだそうです。
まあ要するに今の俺という存在は消えてしまうということになるのですが、それでもいいと思っていたのです。
何故なら俺には守るべき人がいるのですから、その為ならばどんな事でも耐えられる覚悟があったからです。
こうして俺と彼女は結ばれることとなりましたが、残念ながら子供に恵まれることはありませんでした。
ですが、後悔はありません。
だって俺達は愛し合っているんですから。
それに俺達の間には絆がありますからね。
だから何も問題はありませんし、これからも幸せになれると確信しています。
そんな風に思いながらも俺は前を向いて歩き始めた。
愛する彼女と共に歩んでいくことを誓って。
そこで俺は彼女と冒険していると唐突にこんな事を言われるのです。
「あの、キスしませんか?」
頬を赤く染めながらモジモジしながら言う彼女を見て、
何だかこっちも恥ずかしくなりながらも覚悟を決めて答えたのです。
「いいですよ、しましょう」
と言ってしゃがみ込み顔を近づけていったら、
「え? あの、ここでするんですか?」
と困り顔の彼女が言うものだから思わず笑ってしまった。
そして、そのまま唇を重ねると彼女も応えてくれるようになったので
舌を絡ませ合いながら何度も繰り返すことになったが不思議と嫌ではなかった。
それどころか心地良いくらいだった為か、しばらくの間ずっと続けていたせいで息が苦しくなってもやめられず、
結局酸欠気味になるまで続けてしまったのでした。

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