王子マティアス
マティアスはついに来たかと思った。叔父が本格的にマティアスを殺そうとしているのだ。
マティアスは成長し、叔父にとっては王位を継承する脅威でしかない。叔父はマティアスを亡き者にし、弟のルイスを次期国王にするため後ろ盾になるつもりなのだ。
イエーリの思い通りにはさせないと、マティアスとヴィヴィアン、リカオンの姉弟、弟のルイスは策を練った。
マティアスの、相手の心を読む風魔法で、大方のイエーリの策略が見えてきた。
イエーリは隣国のゲイド国と手を組み、マティアスを亡き者にしようとしているのだ。
イエーリはさらにイグニア国にも裏で手を組み、ザイン王国に攻め入る計画を立てていたのだ。
これまでの戦いではマティアスとリカオンの戦力で無理矢理勝っていた。だがこれからの戦いは裏に叔父が暗躍しているのだ。
これまでの戦い方では殺されてしまう。そんな時リカオンが話しを持ってきた。
「霊獣と契約した娘だと?」
「ああ。娘の親父が金に悪どい男爵でな。霊獣と契約した娘を高く買ってほしいっていうんだ。これはチャンスだぞ、マティアス!俺たちが強力な力を得るためのな!」
話しを持ってきたリカオンは興奮気味にマティアスに掴みかかった。勝手に盛り上がっているリカオンにマティアスは煮えきらない態度をとる。
「女性を戦いに連れていくわけにはいかない」
「そんな事言っている場合かよ、マティアス。イエーリだって本格的にお前を殺そうとしているんだ。今回ばかりは正面突破はできないぜ?それに、霊獣の娘は馬車で連れて行けばいい。ぜったいに危険な目には合わせない」
「・・・。でも、どうやってその娘を手に入れるんだ。金を出して買えば、娘は反発するんじゃないか?」
「そんなの簡単だ。マティアスが霊獣娘にプロポーズすればいい」
「プ、プロポーズだと?!」
「そうだよ。娘と結婚すれば不誠実にはならない」
「でも、俺は、トレント公爵令嬢との結婚、」
「あんな女イエーリの息のかかった女じゃねぇか!マティアス!お前、あんな女と結婚するつもりか?!」
「う、うん。ミエリン嬢は苦手、だな」
「だろ?ブスだし、性格悪いし」
マティアスはぼんやりと許嫁であるミエリン嬢を思い浮かべた。マティアスが心を読むまでもなく嫌な性格の女だった。
トレント公爵は叔父のイエーリと懇意で、マティアスの婚約も勝手に進めていたのだ。