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クロエの気持ち

 レティシアはチップと共に、ようやく母クロエの墓まいりに行く事ができた。

「お母さん。やっと会いに来られた」

 レティシアとチップはひっそりとした墓地にいた。

 レティシアは世間的には死んでいるのでフードをまぶかにかぶっていた。

『ここにレティシアのお母さんが眠っているの?』
「うん」

 レティシアの肩に乗ったチップが優しい声で質問する。

『どんなお母さんだった?』
「お母さんは綺麗で優しくて、いつも私の事を宝物って呼んでくれた」

 記憶の中のクロエは、いつも美しく微笑んでいた。

 レティシア、私の宝物。大好きよ。

 クロエは事あるごとにレティシアに言い聞かせた。レティシアは母に愛されている。だから生きなければいけない。どんなに辛い事があっても。それが、もうこの世にいない母に唯一できる恩返しだからだ。

 チップはレティシアの肩からピョンと飛び降りて、クロエの大理石の墓に飛び降りてレティシアを見上げた。

『レティシアは悪いギオレン男爵の策略にも負けず、運命にも負けず、国を揺るがず戦争にも勝利したんだ。さすが僕のレティシア!きっとお母さんも喜んでるよ?』

 レティシアは、チップのあたたかい言葉に感謝をのべようとしてふと動きを止めた。レティシアはずっと以前からチップを知っている事に気づいたからだ。

「チップ。私とチップはずっと前から会っていた、」
『?。うん、そうだよ。レティシアの誕生日に、僕はレティシアと出会ったんだ』
「ううん。それよりも昔、私がもっと小さい頃、」

 困惑しているレティシアに対して、チップは慈愛の表情を浮かべた。

『思い出したんだね?レティシア。そう、僕はレティシアを赤ちゃんの頃から知っている。だって僕は、クロエの契約霊獣だったから』
「チップがお母さんの契約霊獣?」
『そうだよ。前にレティシアが、クロエは霊獣と契約解除していないと言った時、ドキリとしちゃった。だけど、もう話していいよね、クロエ。僕たちのレティシアは、こんなに立派に成長したんだもの』
「チップ。どういう事?」
『うん。順を追って説明するね?まずはレティシア。クロエがいくつだったか知ってる?』
「お母さんの歳?あまり変わらなかったからよくわからないけど、私を拾った時が二十代で、三十代くらいかしら?」
『ううん。クロエはね、二百八十歳だったの』
「えっ?!お母さんが?!」
『霊獣と契約すると、年齢がゆっくりになるんだ。クロエは人間としての肉体が限界にきて、ゆっくりと死を迎えようとしていたんだ』

 
 

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