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血まみれの悲槍編 11


 よし。ここで1つ、頭を整理しよう。

 初めての戦場に怯える俺を、バーダー教官とアルメさんが放置しやがって。
 ところが敵兵の中に“日本語”を知っているやつがいて。
 なのにヘルちゃんがそいつを撲殺しちゃって。
 でもここに移動するまでのちょっとした戦闘で、俺の能力に新たな性質が見つかって。

 そんでもって、挙句の果てにはドルトム君が――何するって!?
 よりにもよってこんな幼い子供がこの部隊を指揮するってか!?
 バーダー教官がいるんだから、指揮官は教官でいいじゃん!

 もう駄目だ! さすがの俺も処理しきれねぇよ!
 つーかみんなしていい加減にしてくれ!
 事前に教えておいてくれればこんなに慌てなくったっていいような情報もいくつかあるじゃん!
 そういうのは先に教えといてくれよ!

「じゃあ……そだね。
 アルメさんとフライブ君は一緒に動いて、こっちに構えているあそこの敵軍の軍団長とその護衛をやっつけて。
 あの混合部隊の一番奥に魔力が結構強い奴らが固まっているでしょ?
 そのうち1番強い魔力を持った人間がこの軍の指揮官だと思うから、そいつらをよろしく。
 敵陣の前線にいるカッコイイ鎧を着ている奴らは適当に押しのけながら通り過ぎてね。
 敵陣の真ん中をまっすぐに突っ切って敵軍の指揮系統中枢部をまとめて始末して、その後は背後から敵陣を崩してほしいんだ。
 いい?」

「了解よ」
「わかったぁ!」

「ヘルちゃんとガルト君は王子と一緒に敵の部隊長を倒して。
 7、8人くらいかな? 敵陣の中にちょっと魔力の強い人間たちが分散しているでしょ?
 その人間が各部隊の部隊長だと思うから、敵陣を移動しながらそいつらをやっつけて。
 フライブ君たちに総指揮官を倒してもらって、ヘルちゃんたちに各部隊長を倒してもらって。
 そうやって先に敵の指揮系統と士気を崩しておけば、戦いが楽になるからね。
 それでその後は敵の右翼にまわって。敵陣の脇から弓とか持ってる兵をつぶしたり、あと遠距離魔法を使う奴らをつぶして。
 そんな感じで敵の裏側に回ったフライブ君たちと、ここにとどまる僕たち。そして敵右翼のヘルちゃんたちと、敵左翼にそびえる岩山で四方から敵を囲もう」

「わかりましたわ」
「承知いたしました」
「うむ。了解した」

 あと、このタイミングでドルトム君が流暢にしゃべってやがる!
 なぜだ? なぜそのキャラに切り替わった?
 戦闘中だからか……? ヘルちゃんたちのように戦闘で興奮するとやはりそうな……いや、ちょっと待て。

 たとえ戦闘中だと言っても、ドルトム君がいつも通りのたどたどしい言葉使いをしていた状況だってあるっちゃある。
 というかほんの数秒前までいつもどおりの口調だったからな。

 じゃあ、どういう条件でドルトム君は変わるんだ?
 うーん。
 人が……人じゃなかった。この子も魔族だ。
 まぁ、どっちでもいいけど、普段口数の少ない人がぺらぺらと喋り出すきっかけとは……?
 もしかして……自分が興味を持っている話題になると口数が増すタイプなのか?
 それでドルトム君は作戦とか戦術とか――そういうことに興味があるからそれを他者に伝えるときだけ流暢になるとか?

 いやでも以前8番訓練場でバーダー教官と戦っていた時は、ころころ口調が変わっていたような……あんまり覚えてねぇけどさ。
 なんだろ? 俺と喋っている時……うーん、俺に話しかけてくるときだけいつも通りのドルトム君だったような気もするけど……俺に対して……そう。俺にアドバイスを……うん! 俺になんらかの“アドバイス”をする時はいつも通りだったな!

 つまり“戦術”に関する話だけ流暢になって。んで“戦闘に関するアドバイス”などはいつも通りの口調ってことか!
 分かりづらいわ! 誰だよ、この子にそんな変な性格植えつけたのは!

「お、えい! タ、タカーシ君?」
「ん?」
「後ろに……き、気をつけてね。あと、自然同化、同化魔法使っててもいいよ。気配を……消しても、ぼ、僕の声……聞こえるでしょ?」

 ちなみに今この瞬間も俺の周りでは激しい乱戦が繰り広げられている。
 俺は俺でぎゃーぎゃー叫びながら襲い来る人間たちから逃げ回っていたが、この時、俺の背後に迫っていたなかなかの魔力を持つ兵士をドルトム君が球状の炎系魔法で始末してくれたんだ。

「あ、ありがとう。それと……じゃあ僕消えるね?」
「う、うん。気をつけて……ね」

 そして俺は再度自然同化魔法を発動する。
 これにより敵の攻撃が俺に向かうことはなくなったため、俺は無防備な敵に対して死なない程度の殴打による攻撃を始めた。

「何かいるぞ! 気をつけろ!」

 人間たちが異変に気づいても問題なし。
 そもそも俺に気をつける以前にもっとやばい奴らに気をつけろよ。
 死なない程度に気絶させられるだけ嬉しく思え。

「ふっふっふ。どうなることかと思ったけど……これなら大丈夫そうだな」

 気配を消し敵意が向けられなくなったことで、俺はいくらか冷静さを取り戻す。
 わずかな安心感を抱きその思いをふと呟いていると、再びドルトム君の指示が聞こえてきた。

「教官? 僕とタカーシ君と教官はここにとどまって敵が森の中に行かないようにする役目だけどそれでいい?
 教官の腕力ならあの鎧軍団も簡単に倒せるでしょ?
 僕の魔法とタカーシ君の魔法で支援するから、あの堅そうな陣形をばしばし崩してね。
 それでフライブ君たちが敵の将官を倒してくれたら包囲戦を始めよう」

「あぁ、それでよかろう」

 それとさ。今更だけど幼いドルトム君のどっからそんな作戦が浮かんでくるんだよ?
 幼児にちょっと毛が生えた程度の知能のはずなのに、その作戦のクオリティはおかしいだろ?
 バーダー教官も異議を唱えるどころか満面の笑みでうなずいてるし。

 これか? これがバーダー教官が試してみたいって言っていたドルトム君の才能か?
 俺んちの談話室でヘルちゃんを完膚無きにまで叩きのめしていたドルトム君のゲームの才能はこの能力の一部だったってことかぁ!

 ……

 いや、もう限界だ。色々ありすぎて俺の頭がオーバーヒートしそうだ。
 ここはそうだな。考えるのやめて、ドルトム君の指示に素直に従うことにしようか。
 あとドルトム君の口調の件については、この戦いが終わったら調査をしてみるとして……

「この機動部隊をさっさと始末して、次にあそこにいる“8千人ぐらい”の軍を作戦通りに壊滅させよう!
 でもその後ろにはフライブ君のお父さんたちが戦っている“12万越え”の大軍がいるから、みんな魔力の無駄使いはしないようにね!」

 うぉーい!
 敵の数が増えてるぅ!
 ドルトム君、今なんて言った? 12万!?

 いや、最初は4万で……でも続々と増援が戦地に向かっているとか。
 そんなこと言ってたな。鳥の獣人の伝令さんが。

 んで結局、今現在の敵の数は12万?
 片や我々は30そこそこ。
 マジか? この戦い、マジでこのままいくつもりなんか?

「おぉ!」

 絶望的な敵兵の数を伝えながら味方を鼓舞したドルトム君の言葉に、フライブ君たちが子供っぽく元気な声をあげた。
 その声が意外とクリアに聞こえたため、俺はちょうど目の前にいた敵の胴体にボディーブローをくらわせた後、自分の周りに意識を向ける。
 敵機動部隊の最後の1人がアルメさんの牙の餌食となり、戦場に束の間の静寂が訪れていた。

 いや、俺が手をかけた敵兵は絶命していないから、わずかなうめき声がところどころから聞こえ……

「ここにも生き残りが……えい!
 まったくもう。タカーシ? ちゃんととどめを刺して上げなさいな! 人間どもがかわいそうでしょう!」

 いや、有難迷惑なことにそういう敵兵をヘルちゃんが丁寧に殺しやがったせいで、完璧ともいえる静寂が広がっていた。
 初戦はとりあえず勝利。
 お次は数百メートルほどの距離までゆっくりと迫ってきている8千の兵。
 でもその後には12万にもなる敵先遣隊の本隊。

 もうさ。“先遣隊”の意味が分からなくなってきたわ。
 しかもその後ろには今現在砂漠を渡ってこっちに向かっている敵軍の本隊がいるんだろ?
 多分、そいつらは何十万という軍勢だ。
 先が……先が長い……。

 死屍累々の中でぽつり、ぽつりと立つ我々魔族たち。
 敵の前線がこちらと接触するまでのわずかな時間に生まれた休息を、各々死肉をあさったり敵の武器を吟味したりしているが、みんな大した怪我はしてなさそうだ。
 というか多分全員無傷だ。
 唯一の大きな被害と言えば――俺がさっきヘルちゃんからくらった頭部の痛みだけか……。

「よし。じゃあいこうか。
 ガルト? 好きなだけ殺気を放ってよいぞ。
 ヘルタはガルトとフライブに防御魔法を使ってやれ。ドルトムとタカーシは俺が面倒を見る。
 フライブは遠吠えの準備を。あっ、アルメ殿も一緒にやってあげてください。
 それでドルトム? 作戦開始の掛け声を」

「う、うん。わか、わかった。
 ――総員、作戦開始ぃ!」

「うぁおおおぉぉぉおぉぉぉおぉーーーーーーーーーーん!」

 アルメさんとフライブ君の綺麗なハモリ声を皮切りに、各々が動き出す。
 ドルトム君の指示通りに、まずはアルメさんとフライブ君のコンビが敵陣に向けて走り始めた。

 同時にガルト君が魔力とは違う気味の悪い気配を放ち始め――いや、これ魔力と一緒だな。
 たいそうなこと言ってたけど、結局魔力をとげとげしくしただけだ。
 でもその魔力は以前俺がバレン将軍から受けたような恐ろしい気配にも似ている。
 そんな気配をガルト君が放ち始め、隣ではヘルちゃんが呪文を唱えていた。

 いつの間にか俺の隣に来ていたドルトム君も呪文をぶつぶつと唱え始めているけど、悲しいことにドルトム君が俺の傍に来て、しかも俺の手をがっちりと握ってくれたことが予想外に嬉しかったわ。
 うんうん。君のポジションは王子の背中じゃなくて、そこなんだよ。

 じゃねーわ。
 そんなことに喜んでる場合じゃねーわ。

 うーん。
 バーダー教官もかつてないほどおぞましい魔力を放ち始めたし、王子は王子で角にものすげぇ魔力を込めているし。
 俺、どうしよ?
 俺も体から放つ魔力をもっと強くした方がいいのかな?
 でも、まだ敵が遠くにいるから今そんなことしても意味ないしなぁ。
 つーかみんなして魔力強く出しすぎじゃね? さっきドルトム君が無駄遣いするなって言ってたじゃんよ。

「うーん。オオカミ族の遠吠えはいつ聞いても素晴らしい。
 戦意が果てしなく燃え上がり、武者震いが止まらん」

 あと、バーダー教官?
 その震え、多分牛の本能がオオカミの遠吠えに怯えているだけじゃね?
 あんた、上半身は牛じゃんよ。
 一瞬魔力が小さくなったし、どう考えたって牛のDNAがビビっているだけだって。

「そ、そうですか……?」
「うむ。タカーシはそうは思わんのか?」
「いえ、別に……」
「そうか。この感覚を味わえんとはな……。もったいない」
「はぁ」

 うーん。バーダー教官って、もしかするとちょっとした変態なのかも。
 まぁいいか。
 じゃあ、俺は……そだな。何しようか。

 あっ、そうだ。
 さっき幻惑魔法を試そうとしてお流れになっていたんだっけ。
 じゃあ、その内容を考えておこう。

「うーん……」

 右手でドルトム君の手を握り返しながら、左手の指をあごに軽くそえる。
 そんな動作とともに俺は思考を始めた。

 まず頭に浮かんだのは、この間の訓練で試した炎系魔法の幻影。
 エールディの7番訓練場で初めて幻惑魔法を発動した時に使った、ドルトム君の炎系魔法を幻として相手に見せるやつだ。
 とはいえこれは相手を死傷する類の幻ではないので、今はあまり意味のないような気がする。

 例えば、訓練の時のようにバーダー教官のような強大な敵1体と我々が戦う場合。
 これなら味方の攻撃や姿そのもののフェイクを生み出すことで、味方の攻撃の助けになるだろうし、味方の身の安全も増すだろう。
 これは実力の拮抗した相手と少数対少数のチーム戦を行う時にも有効だ。

 でも今は違う。
 俺たち魔族が人間に対して個体的には圧倒的に強い状況。しかも数においてはこちらが圧倒的に少数。
 ドルトム君たちはフェイクや小細工の類をしなくても目の前の人間たちを余裕で倒せるし、むしろ俺の幻惑魔法で人間たちが余計な動きをしてしまうと、それがみんなの攻撃の邪魔になってしまう可能性だってある。

 ドルトム君が人間の集団に狙いを定めて炎系魔法を発射したとして、しかしながら俺の偽りの炎系魔法が先にその集団を狙っていたため、人間たちが一足先に幻の炎から回避行動をとる。
 結果、ドルトム君の攻撃は誰もいなくなった空間を通り過ぎてしまう、みたいな。
 ドルトム君の炎系魔法の速度は人間たちがそう簡単に回避しきれる速度ではないけど、俺が敵の回避行動を促してしまったせいで何人かを取り逃してしまうことになるんだ。

 んでそういうことが何度も起きると、それは結局魔力の無駄遣いになってしまい、やがて戦いが進むにつれて大きな負担となってくるだろう。
 ……ような気がする。
 そもそも俺のサポートがなくったってみんな余裕で目の前の敵を倒せる状況なんだから、そういう類の幻影はいらないんだよな。

 じゃあ、どうするか。
 つーかさ。よくよく考えてみると、俺の幻惑魔法ってこういう状況じゃ使い道なくね?
 魔法をかけることで人間たちが戦闘不能になって倒れたりしてくれるんだったら効果はあるかもしれないけど、幻惑魔法の効果だってどうせ俺の魔力が届く範囲だろうし。
 たとえ目の前の敵に幻惑魔法をかけたところでそれはおそらく数十人程度。俺が居場所を移動すれば、そいつらはいずれ俺の魔法の有効範囲から外れ、彼らにかかった幻惑は解けるだろう。

 まぁ、相手が幻惑にかかっているうちに俺が奴らに物理的な攻撃を与え、怪我の類で戦闘不能に陥らせることもできるだろうけどさ。
 それはそれでめんどくせぇ。
 つーかそうなるとただの接近戦だから、俺のことを中・長距離戦用の戦力としてみなしているドルトム君の期待にそえられないような気もするしな。

 あとさ。そもそも俺の幻惑魔法って一度かかったら解除されないものなのかな?
 それともさっき思ったみたいに、俺の魔法の有効範囲から外れたりすれば解除されるのか?
 または……時間がたったら勝手に解除されたり……あと、俺が意識を失ったりした場合にのみ解除されるとか。
 その辺の条件、どうなってるんだろう……?

 あぁ、こんなんだったら2回目の訓練の時に色々試しておくんだった。
 実はさ、初めての訓練から2日後に、すでに2回目の訓練をしているんだよ。
 んで他にも、鉄砲の火をつけるための炎系魔法の訓練の時とかも、みんなが一緒にいたんだ。

 その間、炎系魔法の訓練に必死に打ち込むことで俺は“かろうじて”目的を達成できたんだけど、あの時にみんなに協力してもらって、幻惑魔法の方もいろいろと試しておくべきだったな。

 くっそ。今ここで悔しがってもしょうがないんだけど、ここ数日はもっといろんなことをしっかり試しておくべきだった。
 マッチ棒程度の炎で感動してる場合じゃなかったわ。

「タ、タカーシ君? だ、大丈夫……?」

 ドルトム君の声でふと我に返ると、遠くの方ではすでにアルメさんとフライブ君が敵陣に突っ込んでいた。
 それと同じくして敵陣からも戦意を高めるための掛け声、アルメさんたちに襲いかかるための叫び声、または逆にアルメさんたちの攻撃を受けた人間の悲鳴などが聞こえてきた。

 敵陣の前方は重厚な鎧に身を包んだ重装歩兵がおよそ3千。
 さっきドルトム君が敵の総数を約8千と言っていたし、重装歩兵はそんな敵陣の前側3分の1を埋め尽くしているから、多分それぐらいの人数になると思う。
 幅4百メートルほどの間に密集しながら整列し、しかも最前列では収まりきれないために縦の方にも4~5列ぐらい並んでいる。

 重装歩兵の部隊はそんな堅い陣形ではあるが、アルメさんとフライブ君はそこに物おじせずに突入し、前後左右の敵を鎧ごと蹴り飛ばしながら進んでいた。
 俺が今いる場所からはすぐに2人の姿が見えなくなったけど、2人が暴れているであろう敵陣の一部からは砂ぼこりの他に、鎧を着た兵士が定期的に空中に“ぴょーん”って蹴り飛ばされているから、アルメさんたちは順調に進んでいるんだろう。

 んで、その2人から少し遅れて妖精コンビと王子も突入を開始していた。
 こちらはというと獣人コンビに比べていくらか遅い移動だったため、敵の最前列と接触する前に敵陣後方に配備されていた弓矢部隊や遠距離攻撃魔法部隊の攻撃にさらされることとなっていた。
 でもヘルちゃんとガルト君はヘルちゃん自家製の強力な防御魔法に体を包まれているし、王子は角の先から魔力の塊みたいなものを傘のように広げ、敵の魔法攻撃や矢をいとも簡単に弾いている。

 そしていざ敵最前線に接近というところで、王子がさっき見せた破壊的な突撃を再度発動した。
 今度は角を前に向け、そのまままっすぐ――いや、ちょっと斜めに進路を曲げて突撃したな。
 その先にちょっと魔力の強い人間がいるから、そいつを狙ったんだろう。
 あの3人の役目は敵陣に分散している各部隊の部隊長を仕留める役目だからな。
 おっ、早速最初のターゲットを始末して、今度は左から右へと移動を始めた。反対側にいる重装歩兵部隊の隊長を狙い始めたか。

「タカー……シ君……?」

 おっとっと。戦況を観察してたらドルトム君に答えるのを忘れちゃってたわ。

「あ、うん。ごめん。大丈夫だよ」
「そう。それな……ら、いいけ……いいけど」

 ちなみに今のドルトム君はいつもどおりのモジモジ少年モード。
 やっぱりこっちの方が可愛いな。

「みんなが突撃したおかげで、敵の進軍が止まっちゃったね。こっちまで来なさそうだから、僕たちもあっちに行くことにしよう。
 教官? いいでしょ?」

「あぁ。そうしようか」

 と思ったらドルトム君の口調がまた変わり、その提案にバーダー教官がうなづいた。

しおり