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マティアスとルイス

 着飾ったレティシアはヴィヴィアンに連れられて別な部屋に移動した。そこには会いたかったマティアス王子とリカオン、それにマティアスそっくりな少年がいた。

「レティシア。帰ってきたんだな!マックスを連れてきてくれてありがとう!」

 マティアス王子の満面の笑みに、レティシアの心はほんわかとあたたかくなる。

「マックスが言っていたぞ?レティシアがブラッシングしてくれて気持ち良かったって」
「えっ?!」

 何故レティシアがマックスにした事をマティアスが知っているのだろうか。マティアスのとなりに立っていたリカオンと少年はギョッとした表情になった。

 そういえばチップが言っていた。マティアスは馬と会話ができると。

 リカオンはこの話題を変えたいらしく、肘でマティアスをつつきながら言った。

「レ、レティシア。見違えたな」
「ありがとうございます」

 レティシアが軽くお辞儀をすると、リカオンのマティアスをこづく強さが強くなる。

「痛いぞ!何すんだよ!」
「お前がバカだからだ!レティシアを見て何か思わないのか?!」
「ん?。いつものレティシアだぞ?」
「だからぁ!服がいつもと違うだろ?!」
「おお、そうだな。ドレス着てるな」
「・・・。マティアス、お前、レティシアが綺麗だとか、そういう感想ないわけ?」

 どうやらリカオンは、マティアスにレティシアを褒めさせたいようだ。マティアスはレティシアの装いの変化はあまり気にならないらしい。いたたまれないのでマティアスをけしかけるのはやめてほしい。

 マティアスは周りの重苦しい雰囲気など一切意にかいさないようで、満面の笑顔で言った。

「おう、レティシアはいつも綺麗だ!」

 レティシアは顔が爆発しそうになった。マティアスは今何と言ったのだろうか。レティシアの耳が正常に機能していれば、マティアスはレティシアの事を綺麗といったのだ。

 固まったまま動けないでいるレティシアの肩に、温かい手が置かれる。振り向くとヴィヴィアンだった。

 ヴィヴィアンは渋い顔でマティアスに言った。

「マティアス。今の返しは及第点です。正解は、レティシアお嬢さまはいつも綺麗だけど、今日は一段と綺麗だ、です」
「長ったらしいなぁ。そんな事より、レティシア。俺の弟の紹介がまだだったな?ルイスだ。仲良くしてやってくれ」

 それまで青い顔をしていた少年が頬をばら色に染めて微笑んだ。マティアスが小さくなったような美少年だった。

「初めまして、レティシア嬢。ルイスと申します。兄がお世話になっています」

 ルイスは優雅な仕草でお辞儀をした。レティシアもぎこちなさを残しながらのあいさつをした。

「お初にお目にかかります。ルイス第二王子殿下。レティシアと申します」

 
 

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