レティシアのドレス
レティシアはヴィヴィアンと共に部屋に入ると、そこには五人の侍女たちが待ち構えていた。
レティシアはチップと引き離され、丸裸にされて風呂に放り込まれた。それまで溜まっていた泥と汚れを徹底的に落とされた。
風呂から上がると、身体中に化粧水とクリームを塗りたくられ、化粧をさせられた。
髪の毛を結いあげられながら、レティシアは横に立っているヴィヴィアンに質問した。
「あのぉ、ヴィヴィアン師匠。私は一体何をさせられているのですか?」
「はい、レティシアお嬢さまを着飾っています」
「私は何故着飾らないといけないのですか?」
「これからパーティーに出席してもらうからです」
「パーティー?!何のパーティーですか?」
「もちろんザイン王国が戦争に勝利した祝いのパーティーです」
「こ、困ります!私は戦争で死んだ事になっているんです。私がパーティーに出れば、ギオレン男爵に生きてる事がばれて、またどこかに嫁がされてしまいます!」
慌てるレティシアに、ヴィヴィアンは何故か苦笑した。
「ご安心ください、レティシアお嬢さま。レティシアお嬢さまはバルべ公爵家の遠縁のご令嬢という事になっております」
「・・・。そう、ですか」
ヴィヴィアンにここまで言われては、レティシアはうなずくしかなかった。
レティシアの化粧が終わると、侍女たちは次々とトルソーにかけたドレスを運んできた。
スカイブルーのドレス、ゴールドのドレス、鮮やかな赤色のドレス、エメラルドグリーンのドレス、すみれ色のドレス。
「素敵、」
レティシアは思わず呟いた。レティシアの反応を満足そうに見たヴィヴィアンは、レティシアの肩に手をそえた。
「レティシアお嬢さま。どのドレスがお気にめしましたか?どのドレスも、レティシアお嬢さまに似合いそうなものをご用意しました」
「どれも素敵で、選べません」
「では、せんえつながら私が選びましょう」
ヴィヴィアンはレティシアをドレスの側に立たせて熟考してから赤のドレスに決めたようだ。
レティシアは鏡の前で呆けたように自分に見惚れた。鮮やかな赤いドレスはレティシアのためにあつらえたようだった。
「素敵、」
『とっても似合ってるよ!』
「ありがとう、チップ」
レティシアは肩に乗ったチップに頬ずりをした。