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「ふふ。こちらこそ言ってくれてありがとう。今日は気疲れしたでしょ、何も考えずにゆっくり休みなさい」

「・・・あい。おやすみなさい」

「おやすみ」


電話を終えた後、自分の意思とは関係なく涙が溢れてきた。
悲しい涙ではない。自分の中のありとあらゆる感情が涙となって溢れ出る。

春香と別れてから、母さんの顔がずっと頭にあった。

──生きていてほしかった。
大人になった、今のわたしの言う事を聞いてほしかったよ。そしたらたぶんさ、母さんは信じてくれたよね。それで、わたしを抱きしめてくれたと思う。

でもさ、安心して母さん。
わたしには、わたし以上に、わたしの事を大事にしてくれる人達がいるよ。
だからわたしも、その人達のために一生懸命生きようと思うんだ。

だから、天(そら)の上からおばあちゃんと一緒に、笑いながら見ていてね。


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