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「悩みというか・・・ちょっと滅入ってたのはホントです」

「あたしでよかったら話して。言いたくないなら聞かないわ」

わたしが黙っていると、早坂さんがギュッと手を握った。

「やっぱり気になるから聞きたいわ」

その言い様に、思わず噴き出した。

「・・・春香、なんですけど」

「うん?」

「2人に会ってから、こうやって出かける機会も増えたじゃないですか」

「うん」

「最初は誤魔化せてたけど、こうやって続くと、やっぱりおかしいなって思うんですよね。出かけるのはいつも夜遅くだし。何してるの?って聞かれても、本当の事言えるわけないし。わたし嘘が下手だから、いつも変な態度とっちゃって・・・」

「あー、春香ちゃんはあなたに隠し事されてると思ってるのね」

「はい。深くは聞いてこないんですけど、今日は春香のわたしに対する不信感が凄く伝わってきて」

「本当に仲が良いからこそ、少しの違和感も気になるのよね」

「・・・本当の事を言えないのが、もどかしくて。辛くて」

「言えないって、誰が決めた?」

「・・・・・・え?」

「言っちゃダメって、誰かに言われたの?」

「いや・・・だって・・・」

──いや、そう。わたしもそう思ったんだ。本当の事を言ったらダメなの?と。そんなの誰が決めたの?と。

「あなた達が本当に信頼し合ってるなら、あなたの言葉をちゃんと聞いてくれると思わない?」

「・・・そうなんですけど・・・」

「こわいのよね。どういう反応されるか。頭がおかしいと思われるんじゃないかって」

その通りだった。春香なら信じてくれると思う反面、昔の母さんの事を思い出すと、口にするのがこわい。

「あたしは、あなたの気持ち1つだと思うけど。言いたいと思うなら言うべきよ。先の事ばかり考えないで、あなたの気持ちを大事にしなさい。あなたが伝えたいと思うほど大事な人なら、相手もわかってくれるんじゃない?無責任に聞こえたらゴメンなさいね」

──不思議だった。心のモヤが一瞬にして吹き飛んだ。

「まあ、もしもの時はあたし達がいるし?証明という意味では・・・」

「早坂さん!」早坂さんの手を両手でギュッと握った。「ありがとうございます!」

「え?あ、うん・・・」

「わたし、なんか勇気湧いてきました」

「それは良かったけど、最後の話聞いてた?」

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