17
「悩みというか・・・ちょっと滅入ってたのはホントです」
「あたしでよかったら話して。言いたくないなら聞かないわ」
わたしが黙っていると、早坂さんがギュッと手を握った。
「やっぱり気になるから聞きたいわ」
その言い様に、思わず噴き出した。
「・・・春香、なんですけど」
「うん?」
「2人に会ってから、こうやって出かける機会も増えたじゃないですか」
「うん」
「最初は誤魔化せてたけど、こうやって続くと、やっぱりおかしいなって思うんですよね。出かけるのはいつも夜遅くだし。何してるの?って聞かれても、本当の事言えるわけないし。わたし嘘が下手だから、いつも変な態度とっちゃって・・・」
「あー、春香ちゃんはあなたに隠し事されてると思ってるのね」
「はい。深くは聞いてこないんですけど、今日は春香のわたしに対する不信感が凄く伝わってきて」
「本当に仲が良いからこそ、少しの違和感も気になるのよね」
「・・・本当の事を言えないのが、もどかしくて。辛くて」
「言えないって、誰が決めた?」
「・・・・・・え?」
「言っちゃダメって、誰かに言われたの?」
「いや・・・だって・・・」
──いや、そう。わたしもそう思ったんだ。本当の事を言ったらダメなの?と。そんなの誰が決めたの?と。
「あなた達が本当に信頼し合ってるなら、あなたの言葉をちゃんと聞いてくれると思わない?」
「・・・そうなんですけど・・・」
「こわいのよね。どういう反応されるか。頭がおかしいと思われるんじゃないかって」
その通りだった。春香なら信じてくれると思う反面、昔の母さんの事を思い出すと、口にするのがこわい。
「あたしは、あなたの気持ち1つだと思うけど。言いたいと思うなら言うべきよ。先の事ばかり考えないで、あなたの気持ちを大事にしなさい。あなたが伝えたいと思うほど大事な人なら、相手もわかってくれるんじゃない?無責任に聞こえたらゴメンなさいね」
──不思議だった。心のモヤが一瞬にして吹き飛んだ。
「まあ、もしもの時はあたし達がいるし?証明という意味では・・・」
「早坂さん!」早坂さんの手を両手でギュッと握った。「ありがとうございます!」
「え?あ、うん・・・」
「わたし、なんか勇気湧いてきました」
「それは良かったけど、最後の話聞いてた?」