エピローグ ある日の葵
イブニングとの最後の戦いから1週間。
今神尾西第三中学校はゴールデンウィークの連休に入っていた。
イブニングも、ドーン帝国も、全く気配を感じない日々が流れた。
そんな日々をアンジェストロの1人、明瀬葵は嬉しくも、少々怖いと思っていた。
戦いたいわけではないが、反対に敵が静かすぎるというのも、恐怖感があるのだ。
「アオイー、そろそろ出かける時間ミラー!」
自室で着替えていた所に、ミランが飛び込んでくる。
「え、もうそんな時間!?い、急がなきゃ…!」
本日は薫と柚希と共に遊びに行く約束をしていたのだ。
そんな朝に、ドーン帝国との戦いについて考えてた葵は着替えがゆっくりになっていて、待ち合わせの時間に遅れそうになっていた。
「ミラン!ミランも早く腕輪に入って!」
「わかったミラ!」
ミランは葵の左腕に付いているアンジェストロに変身するための腕輪に粒子状になって入っていく。
先日、妖精女王から教えてもらった腕輪の機能で、どうやらこの腕輪には妖精が入れるようになっていたようで、そうすればどこにでも妖精と一緒に歩ける事が分かったのだ。
妖精女王も他の妖精から様々な話を聞いた中にあった、話だったらしく実際にラパンたちが入る所を見た時は、女王も中々驚いていた。
「よしよし、準備も出きたし…早く待ち合わせ場所に行かなきゃ!」
鞄を持って、自室から階段を降り、玄関まで行く。
すると、玄関の扉がガチャリと開いた。
「おっ、葵。今日はお出かけか?」
「パパ!?え、今日帰って来るって言ってたっけ!」
扉を開けたのは、葵の父、明瀬桂吾だ。
少々特殊な職場で働いており、数ヶ月家に帰ってこない事もしばしばあるのだが、大体帰ってくる時は葵や妻、明瀬美羽に連絡をしてから帰ってくるのだが、今日は突然帰って来た。
「あぁ、いや。今日はちょっと部屋にある本を取ろうと思って一瞬戻って来たんだ。…って、葵出かけるんだろ、親父と話してないで、行ってらっしゃい!」
「あぁ、うん……パパ、最近中々帰ってこないけど…無理しないでね…」
「だいじょーぶ!葵の親父は頑丈にできてっから!…あ、そうだ。もし友達と出かけるにしても北区には近づくなよ」
「北区?そういえばいっぱい行方不明者が出てるってニュースでやってたね」
「そそ、原因とか何もわかってないから、危なそうな事には関わらないようにな!」
「はい!今日は東区の博物館に行ってきます!」
「了解しました!葵隊員!」
お互いに敬礼をした後、葵は駆け足で家を後にした。
明瀬家では唐突に謎のノリを父と娘が始める事が多々あり、大体母がそれを冷静な目で見ているというのが定番だった。
「…葵…大きくなったよなぁ…。って、いけねいけね、俺もさっさと戻らなきゃ!博士に叱られちまうぜ」
桂吾は足早に階段を駆け上る。
次の戦いは近くまで来ている。