ニコちゃん先生4
「なぁ、なんでも屋って何するんだ?」
オールが目を輝かせながら訊いてくる。
俺は純粋無垢なその視線にたじろぎ、
「えーっと……」
と、言葉を詰まらせた。
あたふたする俺に、オールが期待の眼差しを向けてくる。
「そんなことよりオール君、ミカちゃんのこと好きって本当?」
ルビンの唐突な質問に、オールは激しく動揺した。
ルビンに視線を向けると、『任せておいて』という目で俺のことを見ていた。
どうやら助け舟を出してくれたようだ。
「は、ハァ? べ、別にあんな奴全然好きじゃねぇし。意味分かんねぇし。誰に聞いたんだよ、そんなしょうもない嘘……」
明らかに慌てているオールをニヤニヤしながら見ていると
「な、なんだよニコちゃん先生! ちげーからな? 俺は別にあんな奴全然好きじゃねぇからな!?」
と顔の前で手をブンブン振りながら言ってきた。
「はいはい。そうだね〜」
「あー! その顔は信じてないな!」
「信じてるよ〜」
「絶対嘘だ!」
ムキになったオールとそんなやりとりをしていると、今まで静かにしていたトレイが
「コイン先生、急がなくていいんですか?」
と言った。
「……ん? あぁそっか。ごめんごめん。そうだった。早く行かないと」
トレイが話しかけた相手が自分だと、一瞬気づけなかった。
まだこの名前で呼ばれることに慣れていないのだ。
ルビンも
「トレイ君の言う通りだね。早く行こ、ニコちゃん先生」
と言ってスタスタと歩き始めた。
俺なんかよりもよっぽどしっかりしている子供たちに対して情けない気持ちを感じながら、俺はルビンの背中を追って歩き始めた。