バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ


「君が、泳斗くんだね」

「・・・あっ、そうです。泳斗くん、この人は財前さんだよ。財前 龍慈郎さん」

「リュージロー!」泳斗くんが財前さんを指さした。

「りゅうじろうさん!だよ」

財前さんはハハッと笑った。

「構わないよ。そして君の肩にいるのが、空舞ちゃんだね」

「そうです!空舞さん、この人が財前さんです」

「今聞いたわよ。落ち着きなさい」

──いや、その通りで。なんでわたしだけテンパっているんだろう。

「2人から話は聞いてるよ。まず、座りなさい」

財前さんの隣に瀬野さん。財前さんの向かいにわたし。その隣に早坂さん。これも、毎度同じだ。
膝に乗せた泳斗くんは大きな木のテーブルが気に入ったのか、撫でるように触り始めた。
財前さんは泳斗くんの手をジッと見つめた。

「ふむ。泳斗くん、ここに立てるかい?」

財前さんがテーブルにチョンと触れる。

「うん!」泳斗くんはわたしの膝を踏み台にして、ピョンとテーブルに上がった。

財前さんは顎をさすりながら泳斗くんをまじまじと観察している。

「その服、脱げるかな?」

「えっ!いいの!?」

泳斗くんは返事を待たずに着ていたシャツに手をかけた。着慣れていないせいか、少し手間取っていたが、ズボンはすんなりと脱いでみせた。

「ほう・・・これは、興味深い」

財前さんの視線は泳斗くんのヘソから下へ注がれている。

「でしょ?あたしも最初見た時、驚いたわ。こんな立派な物がついた妖怪、見た事ないわ」

「立派な物つーか、人間とまったく同じ物、だろ」

「あら、アンタよりは立派なんじゃない?」

「お前な・・・」

わたしの視線に気づいた早坂さんがハッとした。

「やだ!ゴメンなさい、雪音ちゃんには刺激が強かったわね。今のは聞かなかったことにして」

とくに反論はしなかったが、この人はわたしを何歳だと思っているんだろう。そりゃあ、春香には今時の中学生のほうがわたしより大人だと言われるけど。

「ありがとう。もう着てもいいよ」

「ボク、着たくない!」

「うーん、でも着たほうがいいかな」

泳斗くんは財前さんと目を合わせると、素直に言う事を聞いた。わずかだが、一瞬ピリッとした空気を感じた。
財前さんには有無を言わせぬ何かがある。泳斗くんもそれを感じるんだろう。

しおり