男爵令嬢レティシア2
レティシアが朝食を食べに食堂に向かおうとすると、ホコリだらけのメグがレティシアの足元にすがりついてきた。
「レティシアお嬢さま!どうかお慈悲を!男爵さまが私を屋敷から追い出そうとするのです」
メグはレティシアのドレスのすそを掴み、シクシクと泣き出した。後から怒りの形相のメイド長がやって来る。
「メグ!レティシアお嬢さまになんて事を!」
メイド長はメグの髪の毛をひっつかむと、引き倒して平手打ちをした。メグは鼻と口から血を流しながら怨みがましい目でメイド長をにらんだ。
「何で私だけ罰をうけなきゃならないのよ!そもそも私はメイド長の指図でレティシアお嬢さまをいじめたのよ!メイド長だって罰を受けるべきよ!」
「メグ!お前、レティシアお嬢さまの前でそんな嘘を!」
メイド長はメグの両頬を何度も叩いた。レティシアはあまりのくだらない三文芝居に気分が悪くなった。
メグは鼻と口から血をダラダラと流しながらレティシアに言った。
「レティシアお嬢さま!優しいお嬢さまなら私の事わかってくださいますよね?!」
レティシアはメグを冷めた目で見下ろしながら言った。
「メグ、何か勘違いをしていませんか?メグの解雇は男爵さまの決定でしょ?男爵さまの決定を覆す事など私にできるわけないじゃない」
レティシアはそれだけ言うと一人で食堂に向かおうとした。メイド長はレティシアの前に立ちふさがるようにすると、卑屈な笑みを浮かべて言った。
「レティシアお嬢さま。すぐさまこの汚いメグを屋敷から追い出します。私はレティシアお嬢さまのしもべでございます。何なりとお申し付けください」
レティシアは明確な吐き気をもよおした。レティシアは食堂に行くのをやめて、部屋に戻る事にした。後ろをついてこようとするメイド長に振り向き、二度と自分の視界に入るなと命令した。これはレティシアが男爵令嬢になって、使用人に対する初めての命令だった。