1
「雪音さん、なんでマスクしてるんすか?」
「ん、ちょっと顔がね・・・」
「顔が?あれ、なんか、でこ赤い?」
マスクをずらして醜い顔面を披露すると、一真くんはポカーンと口を開けた。
「どしたんすか、ソレ・・・肌荒れ?」
「いや、火傷」
「火傷!?・・・え、なんで顔に火傷?」
「鬼火にやられた」
「・・・はい?おにび・・・?」
「うん、火の妖怪」
「・・・雪音さん、大丈夫すか?熱とか・・・」
ここで、いつもより遅く春香が出勤してきた。顔を見てすぐわかった。二日酔いだ。程度は中といったところか。
「おはよー。なんでマスクしてんの?」
「おはようございます。春香さん、雪音さんが変です」
「別に驚かないけど、なんで?」
「火の妖怪にやられて、顔火傷したらしいっす」
「・・・は?」
わたしがマスクを顎にかけてニコリと微笑むと、春香は恐ろしい物でも見たかのように顔をしかめた。
「うわ・・・なにそれ、どうしたらそんな事になるわけ?」
「鬼火にやられた」
「おに・・・びぃ?アンタ、酔っ払ってる?」
「一緒にするなっ!」
「どうやったら顔にそこまで火傷負うのよ。花火でもしてたわけ?」
「・・・まあ、花火みたいなもんか」
「雪音さん、マジで大丈夫すか?疲れてるなら無理しないほうが・・・」
「無理はしてないんだけど、2人にお願いがあるんだよね」
「なんすか?」
「実は、足もちょっと負傷してまして、いつものように動けないと思うからフォローお願いしまっす!」
「・・・それはいいすけど、なんで?転んだんすか?」
「うん、まあ・・・」
「顔に火傷して足も負傷って、マジで何やってたわけ?」
「だからさっきから言ってるけど」
春香はうんざりしたように、はあ─と息を吐いた。
「ただでさえ具合悪いのに悪化しそうだわ。ま、わかったわ。アンタはドリンクメインにやって。あたしと一真くんでホールやるから」
「助かりまっす!」
「その顔晒してお客さん不快にさせても困るしね」
しっかり落とされるが、今日に限っては何も言えない。
「頼りにしてまっす!」