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「雪音さん、なんでマスクしてるんすか?」

「ん、ちょっと顔がね・・・」

「顔が?あれ、なんか、でこ赤い?」

マスクをずらして醜い顔面を披露すると、一真くんはポカーンと口を開けた。

「どしたんすか、ソレ・・・肌荒れ?」

「いや、火傷」

「火傷!?・・・え、なんで顔に火傷?」

「鬼火にやられた」

「・・・はい?おにび・・・?」

「うん、火の妖怪」

「・・・雪音さん、大丈夫すか?熱とか・・・」

ここで、いつもより遅く春香が出勤してきた。顔を見てすぐわかった。二日酔いだ。程度は中といったところか。

「おはよー。なんでマスクしてんの?」

「おはようございます。春香さん、雪音さんが変です」

「別に驚かないけど、なんで?」

「火の妖怪にやられて、顔火傷したらしいっす」

「・・・は?」

わたしがマスクを顎にかけてニコリと微笑むと、春香は恐ろしい物でも見たかのように顔をしかめた。

「うわ・・・なにそれ、どうしたらそんな事になるわけ?」

「鬼火にやられた」

「おに・・・びぃ?アンタ、酔っ払ってる?」

「一緒にするなっ!」

「どうやったら顔にそこまで火傷負うのよ。花火でもしてたわけ?」

「・・・まあ、花火みたいなもんか」

「雪音さん、マジで大丈夫すか?疲れてるなら無理しないほうが・・・」

「無理はしてないんだけど、2人にお願いがあるんだよね」

「なんすか?」

「実は、足もちょっと負傷してまして、いつものように動けないと思うからフォローお願いしまっす!」

「・・・それはいいすけど、なんで?転んだんすか?」

「うん、まあ・・・」

「顔に火傷して足も負傷って、マジで何やってたわけ?」

「だからさっきから言ってるけど」

春香はうんざりしたように、はあ─と息を吐いた。

「ただでさえ具合悪いのに悪化しそうだわ。ま、わかったわ。アンタはドリンクメインにやって。あたしと一真くんでホールやるから」

「助かりまっす!」

「その顔晒してお客さん不快にさせても困るしね」

しっかり落とされるが、今日に限っては何も言えない。

「頼りにしてまっす!」


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