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「なにそれ」
「マスクです」
「それはわかるけど、擦れて悪化するんじゃない?」
「この醜い顔を晒すよりマシです」
「醜いどころか可愛いわ。でも、昨日より酷くなったわね。病院に行って薬を貰いましょう」
「いや、大丈夫です。そのうち・・・」
「ダメよ。女の子なんだから、顔に痕が残ったらどうするの」
「少しくらいは気にしません」
それより、わたしが今気になっているのは別の事だ。どうも、上手くはぐらかされた感が否めない。
「あなたねぇ、もうちょっと女の子っていう自覚を持ちなさい?ホントに自分の事には無頓着なんだから」
「悩みが尽きないもので、それどころじゃないんです」
今のは最大限の嫌味のつもりだ。
「あら、何か悩み事があるの?あたしで良かったら聞くわよ?」
その、あたしの事ですけどね!
「結構です。空舞さん帰りましょう・・・アレ?」 空舞さんが、何処にもいない。思わず頭を触って確かめた。
「空舞ちゃんならとっくの前に飛んでったわよ」
「えええ!?」
なんでだろう、気を利かせてくれたとか?いや、空舞さんに限ってそんな事はないか(失礼)。
「さ、行きましょう」
「・・・病院にですか?」
「ええ」
「だとしても、1人で行けます」
「行ける行けないの問題じゃないの」早坂さんはわたしの手を取り、車へ連行した。「反抗したら担ぎ上げるわよ」
そう言えば、従うと思って──いや、従うけども。本当に実行するから、怪我を負っている早坂さんに反抗は出来ない。
「ムカつく・・・」
「聞こえなかったことにするわ」
早坂さんはわたしを握る手にギュッと力を込めた。──ムカつく。でも、それ以上に安心する。
昔、母さんが言っていた事を思い出した。
若い頃は好きっていう気持ちが先走るけど、最終的に大事なのは、一緒にいて安心出来る人よ。雪音も、そう思える人と出逢えるといいわね。
──・・・母さん、わたし、そう思える人と出逢ったかも。先の事はわからないけど、わたしはこの人がそばにいると、強くなれる。出来ない事は無いと思えるんだ。
でも、なんでかなぁ。
わたしには、この人の考えてる事がさっぱりわからないよ。