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第45話 唯一王 元仲間を見守るが

「下手に協力しようとしたらこいつらは俺達を攻撃しようとしてくるだろう。説得するという行為自体が無駄なんだよ。これがこいつらの意地というやつだ。好きにさせてやれ──」

 その言葉にフリーゼは残念そうな表情になり言葉を返してきた。

「……そういう事なら、仕方がないです。残念ですが──。そう言ったことは、私には理解できないです」

「……全くもう。あきれ果てるわ」

 レディナは腕を組みながらため息をつく。彼女は以前にも人間たちと手を組み行動したいたんだっけ、だからこういった感情的なこともわかっているのだろう。
 ハリーセルはがっくりといった様相だった。


 そしてアドナたちはウツロの方へ視線を向けて相対していく。
 トランも、しぶしぶ参加するといった様子で剣を手に取った。


「行くぜ。こんなやつら、さっさとぶっ倒してSランクに舞い戻るぞ!」

「当たり前だぁぁアドナ!」

「そんなの、決まってるじゃない!」

「……うん」

 アドナ達はウツロ達の元へと突っ込んでいく。


 その瞬間俺たちを黙って見ていただけのウツロはこっちに向かって叫び声を発し始めた。

 グォォォォォォォォォォォォォォォォ



 ウツロだけではない。その取り巻きとなっている騎士たちも大きな叫び声を上げ始め、彼らに襲い掛かり始めた。


「周囲にいるのはウツロの手下の兵士「デュラハン」よ。実力自体はそこまでではないけど、ウツロのサポートをして来たり嫌らしい動きをしてくるわ」

 なるほど、バラバラではなく連携して動いているということか。

 まずはデュラハン達とトラン、ウェルキ、アドナとの戦闘が始まる。

 デュラハンたちは実力はそこまでではないが十体以上はいる。数で勝る相手にどう対応していくか見ものだ。


 ズバァァァァァァァァァァァァァァァ!!


「フッ、こんなザコ。俺の敵じゃねぇよ!」

 トランはさすがはAランクといった感じで次々とデュラハンを切り落としていく。

 アドナとウェルキもデュラハンに対して優勢に戦いを進めていく。

 彼らも、雑魚敵程度なら苦戦することはない。まずはこいつらを一層しないことには始まらない。




 しかし手が空いているデュラハンの一部がアドナの背後から攻撃を仕掛けてくる。アドナは別のデュラハンと戦闘中で対応できない。

 デュラハンが背後から切りかかろうとしたその時──。

「させないわ!」

 その瞬間ミュアの遠距離攻撃がそのデュラハンに直撃。アドナへの攻撃は当たることなくデュラハンの肉体が吹き飛び、そのまま壁にたたきつけられる。





 そしてミュアとキルコが後方で術式を放ったり加護を発動したりしていて三人を支援している。

 ウツロの足元に攻撃を与え続け、デュラハンと完全に分断させている。

「相手が連携攻撃を仕掛けてくる可能性がある以上。分断をして各個撃破していくというのは正しい戦略です」

 確かに、フリーゼの言う通りだ。
 自分たちはコンビネーションを生かし相手を撃破。相手を分断し連携を取らせない。

 ここまでアドナたちに大きな作戦ミスはない。


 さすがはSランクをはく奪されたとはいえそこそこ強い。連携もトラン以外は幼いころから取っていただけあってしっかりとれている。
 出だしは悪くない。まずまずといった感じだ。




 流石にさっきまでの雑魚敵とは実力が違う。二人の遠距離攻撃が命中してもほとんど聞いた様子はない。



 何とかデュラハンを倒したアドナたち。そして彼らは視線をウツロへと向けた。


「さあ残るは貴様だけだぜ、総大将さんよぉ……」


 グゥゥゥゥ……。

 ウツロはかすれたよう声を上げながらアドナたちをにらみつけている。


「じゃあ、行かせてもらうぜ」



 グォォォォォォォォォォォォォォォォ──。

 地響きが鳴り響くような叫び声を上げながらウツロがアドナたちに襲い掛かってくる。

「この見かけ倒しが。すぐぶった押してやるよ」

 デュラハン達をすべて倒したことで勢いに乗っているのか、勢いに乗ってウツロに突っ込んでいく。

 ミュアとキルコが同じタイミングでウツロに向かって遠距離攻撃を放つ。


 ドォォォォォォォォォォォォォォォン!

 大爆発を起こす。ウツロは障壁を放ち攻撃を防ぐ。


 それを見た残りの三人は自信を持った表情をして一気に突っ込んでいった。
 その光景に思わずレディナが叫ぶ。


「ダメよ!人間のパワーなんかじゃ対抗できないわ」

 しかし三人は話を聞かない。デュラハンを倒しきって勢いに乗っているのだろう。

「俺はAランクのトラン様だ。お前たちと一緒にするんじゃねぇよ」

 そしてトランがまずウツロとの放った障壁に斬撃を加える。
 トランの攻撃によりウツロの障壁にひびが入った。

 そのひびが入った部分にアドナとウェルキが突きを加える。突きの方が一点への威力が出やすい。
 そして三人はこれを狙っていたのだろう。その一点への攻撃に障壁は耐えられず──。


 ガッシャァァァァァァァァァァァァン!!

 完全に崩壊。

「よっしゃあ。これでこいつは終わりだ。ぶっ殺してやる!」

 アドナたちは完全に勢いに乗って攻勢を強めようとした。そこにレディナが叫ぶ。

「こいつ、あなた達の攻撃を誘っているわ。釣り糸に餌を垂らして、食いついたらパクってかみ砕かれて終わりよ」

 が、障壁を破壊し攻勢のチャンスと考えている彼らは全く話を聞かない。

「雑魚の言う事なんて無視無視、こいつをぶっ倒すぞ!」

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