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それから15分程、その鬼火が現れるのを待ったが、一向に現れる気配はない。
こちらから何かアクションを起こさなければ現れないのか──ただジッと待つには限界がある。
「音でも出してみようかしらね」
早坂さんも同じ事を考えていたようで、ポツリと呟いた。
「音って、何のだ」
「騒ぐとか?昼間襲われた人達も機材を使ってたでしょうし、大きな音でも出せば現れるかしら」
「騒ぐっても限度があるだろ。チェンソーには敵わんぞ」
「まあそうだけど。あたし達男の声で叫んでもねイマイチだし・・・」そう言って早坂さんはわたしを見た。
「え」
「雪音ちゃん、ちょっと騒いでみて」
そんな、唐突に──「騒げって言われても・・・なんて?」
「なんでもいい。さっきみたいに奇声上げればいいだろう」
「あれは咄嗟に出る物で、さあ出せと言われても・・・」
「遊里、虫捕まえてこい」
「わーっ!わかりました!」
ゴホンと咳払いをして口に手を当て、やっほーのポーズをする。そのまま空に向かって息を吸い、「わあ───────!!」
自分の声が、森の中に響き渡る。返ってくるのは静寂だけ。
「わたし、凄いアホっぽくないですか?」
「見てる分にはな。効果があると思えん」
やらせといて言うか。
早坂さんがパンツの後ろポケットからおもむろに携帯を取り出し、画面を操作する。そして、音が流れた。着信音の設定にある、警告音だ。前に朝のアラームに設定していたから知っている。心臓に悪くてやめたが。
早坂さんは音量を最大にした。辺りが静まり返っているだけに、よく響く。
「こんなんじゃ意味ないかしら」
というか、その音自体が緊張感を高めるんですが。逃げろと言われているようだ。
──「意味・・・あったかも」
「ん?なにが?」
早坂さんと瀬野さんが立っているちょうど中間の後方。わたしはそこを指差した。2人が同時に振り返る。そんなに遠くない所に、小さなランプの灯りのような物を確認した。早坂さんが音を止める。
「人・・・じゃないですよね」
「その可能性は低いだろうな。どうする、こっちから向かうか?」
「少し様子を見ましょう」