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15「奴隷商相手にざまぁ展開」

行商人 あらため 奴隷商「なぜ、お前たちがここに!? 早く持ち場に戻れ!」

ガブリエラ「残念ですが、その命令はもう聞けません」

奴隷商「はぁ? 何を言っている!
 逆らうなら、【隷属】で苦痛を――って、あれ!? お前たち、『隷属の首輪』は!?」

ノーラ「今まで、よくも飲まず食わずでこき使ってくれたにゃあ」

ネコたち「「「「「にゃいのにゃいの!」」」」」

奴隷商「『隷属の首輪』はどこへやった!? 勝手に外れるなんてことはありえないはずっ」

ガブリエラ「にゃんか取れました」

奴隷商「はぁ!? 取れるはずがなかろう。説明しろ!」

ガブリエラ「『しろ』と言われましても。ウチらはもう、旧ご主人様の奴隷ではありませんので」

ノーラとネコたち「「「「「(ニヤニヤ)」」」」」

俺(うわーっ。意地悪モードだ。
 リーダーのガブリエラはまだ敬語と品を保ってるけど、ノーラ以下ネコたちは『ざまぁ』をやりたくて仕方ないって感じ。
 あの奴隷商に、相当ひどい扱いを受けてきたんだろうな。
 まぁ、飲まず食わずで働かされ、不潔な鉱山内で寝泊まりさせられてたら、恨んで当然か)

奴隷商「恩知らずめ!
 金貨1,000枚もの借金を肩代わりしてやったのは、このワシだぞ!?」

ガブリエラ「はうっ。
 で、でもでも、旧ご主人様はウチらが討伐したオリハルコン・ドラゴンや、採掘したオリハルコンで金貨1,000枚以上儲けましたよね!?」

奴隷商「うぐっ。そ、それは確かにそうだが。
 奴隷商というのは、そういう商売だ!」

俺(はい、言質頂きました!)

ガブリエラ「とにかくウチらは新しいご主人様のもとでにゃに不自由にゃくやってますので。
 これ以上、無益な報復をするつもりはありませんから、ウチらのことは忘れてください」

奴隷商「新しい主人だと!? 誰だそれは」

俺「私です」

奴隷商「……何だ、この汚らしいクソガキは」

俺(はい不敬罪。
 おーおー、メイドの額にものっすごい青筋が。
 まぁ今の俺はオリドラ狩りで農夫みたいな格好してるから、奴隷商の評価ももっともなんだけどな)
俺「ところで商人様、この森の先にあるオリハルコンの鉱山は、ソリッドステート辺境伯様の持ち物のはずです。
 採掘の許可は得ておられるのでしょうか?」

奴隷商「もちろんだ! ワシはソリッドステート辺境伯様の弟の三男の叔父の姉の主人の兄だぞ!?
 貴族の言うことが信じられないのか!」

俺(それ平民! 『姉の主人』がソリッドステート辺境伯家の陪臣――つまり貴族の家臣だから、平民。その兄のアンタも当然、平民なんよ)
俺「もう一度聞きますが、本当に許可は得ていますか? 無許可の採掘は重罪ですよ?」

奴隷商「田舎住まいのくせに、小賢しいクソガキが(マジックバッグから羊皮紙を取り出す)。
 これが証書だ。これでいいだろう?」

俺「うーん、これ本物ですか? 紋章の、ここの部分がちょっと違うような」

奴隷商「言いがかりを!
 無礼なガキめ、不敬罪でしょっぴいてやるぞ!」

俺(だから、アンタは平民でしょうに)

奴隷商「罰金刑か死刑か、どちらが良い?
 そりゃあ、罰金のほうがいいよなぁ?
 罰金額は金貨10枚だ。払えるのか? 払えないのなら、お前が奴隷になってカネを作るか、んん?」

 奴隷商がマジックバッグから焼き印を取り出す。
 俺を怖がらせようとでもしているのか、焼き印をチラチラと見せつけてくる。

俺「あぁそう言えば、まだ名乗っておりませんでしたね(貴族の礼をする)。
 わたくし、ソリッドステート辺境伯の三男、ストレジオ・ソリッドステートと申します。
 今は、この村の領主名代を勤めております」

奴隷商「…………………………………………へ?
 へ、へ、へ、辺境伯様のご子息!?」

俺(そりゃビビるわな。辺境伯の遠縁を(かた)っていたら、当の辺境伯の息子が出てきたんだから)
俺「そして彼女は、私のメイドにして【剣聖】の、ブルンヒルド・オブ・ソリッドステート」

奴隷商「け、けけけ【剣聖】様!?」

メイド「ご紹介にあずかりました、わたくしメイド 兼 レジ坊ちゃまの乳母 兼 【剣聖】のブルンヒルドです」

 ――カチーン……カチーン……(メイドが剣を少しだけ抜いて、鞘に納めなおす音)

メイド「と・こ・ろ・で。
 わたくしの可愛い可愛いご主人様に対して、アナタは今、何とおっしゃいましたか?」

 ――カチーン……カチーン……

メイド「汚らしいクソガキ? 死刑? 奴隷になるか?
 そのおぞましい焼き印を、レジ坊ちゃまに、どうするおつもりだったので?」

 ――シュッ、チン(メイドが目にも止まらぬ速度で抜剣し、剣を鞘に収める音)
 ――ゴトリ(焼き印の先端が真っ二つになって、落下した音)

奴隷商「ひっ、ひぃぃぃぃいいいいいっ!(尻もちをつく)」

俺「ところで商人さん、こんなモノがあるのですが(虚空から書状を取り出す)。
 父直筆の書状です。これによると、ソリッドステート家はいかなる個人・団体に対しても、オリハルコン鉱山の採掘許可を出していないとのことです。
 おかしいですね。先ほどの商人さんのご発言と矛盾しますね。

 鉱山泥棒は極刑。

 許可証の偽造は極刑。

 貴族紋章の偽造ももちろん極刑。

 トリプル極刑です。何か申し開きは?」

奴隷商「あ、あぁぁ……(失禁)」

俺(清く正しいざまぁ展開。
 それにしても、父の書状が間に合ってよかった。メイド様々だな)

 奴隷商が助けを求めるように、ガブリエラたちに視線を送る。
 だが、ネコたちは冷たい視線を返すばかり。

俺(コイツは前々から、オリハルコン鉱山に目をつけていた。
 鉱山を下見に来がてら、この村で行商もしていたんだろう。
 いや、このへんをうろつくための言い訳作りをしていた、と言ったほうが正しいか)

奴隷商「こ、こ、こんな話、でたらめだ!
 うわーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 奴隷商が短剣を抜いて、俺に斬りかかってくる!

 ――キンッ!(メイドの剣が、奴隷商の短剣を叩き折る音)
 ――ドサッ!(ガブリエラが奴隷商を組み伏せた音)

俺「メイドさんガブリエラさん、やっておしまいなさい!
 ――って、もう終わってる!?」

ガブリエラ「にゃんですか、それは?」

メイド「何かのごっこ遊びでしょうか?
 レジ坊ちゃまは大変に大人びているので忘れがちでが、まだ7歳ですものね」

俺「あぁ、うん。まぁそんなとこ……」




   ◆   ◇   ◆   ◇




 翌日。

俺「ほら、ガブリエラたち」

ガブリエラ「これは、『隷属の首輪』?
 首輪の所有者は――つまりウチらの所有者は、ご主人様のはずですが」

俺「お座り」

ガブリエラとネコたち「?」

ガブリエラ「えーと、座ればいいのですか?
 ……って、あれ? ウチらの行動を強制する力がなくなってる!?」

俺「そりゃ、あの奴隷商がソリッドステート領都に連行されて、『奴隷商』から『犯罪奴隷』にジョブチェンジしたからな。
 この首輪に【付与】されていた【隷属】の力が消えたんだよ」

ノーラ「ざまぁねぇな」

ガブリエラ「少し、可哀想な気もしますが」

俺「気にするな。
 これでお前らは、自由の身だ」

ガブリエラとネコたち「「「「「あ……」」」」」

俺「これから、どうする?
 俺としては、ガブリエラはそばにいてくれると嬉しい。
【暴食】無しだと【剣伯】未満とはいえ、それでもめちゃくちゃ強いし。
 何より【収納伯】だから、俺の【収納星】の隠れ蓑として超便利だから。
 引き換えに俺からは、絶対にお前を飢えさせないと誓う。
 あと相応の給料も出す」

ガブリエラ「にゃはは。にゃんとも直截的で色気のにゃいプロポーズですね」

俺「あ、他のヤツらも、いてくれるならいてほしいぞ。
 お前ら超強いし力仕事もできるしで、この村にとってはすごくありがたい存在だからな。
 魔の森には高ランクの希少な魔物がたくさん潜んでいる。
 冒険者らしく魔物を狩って、その素材を売って生計を立てるってのはどうだ?
 肉は村に売ってくれると助かるんだが。
 ……あぁいや、重ねて言うが、お前らはもう自由の身だ。
 自分たちの進路は、自分たちで決めてくれ」

ガブリエラ「ウチらがこれからどうするかって?
 そんなの、もうとっくの昔に決まっています」

 ――ざざっ(10匹のネコたちがひざまずく音)

ガブリエラ「ウチらはこれからも、ご主人様にお仕えさせていただきます!」

 こうして俺は、10名の超優秀な従者を手に入れた。

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