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すでに疲れてきている。ていうか、瀬野さんも見てるんですけど。
この人に抵抗するだけ無駄なのはわかっているから、大人しく観念する。鉄棒から足を外し、身を預けた。
「・・・下ろしてください」
「あいあい」早坂さんは、満足そうだ。ゆっくりとわたしを下ろす。
気恥ずかしさを誤魔化すべく、早足で滑り台へ向かった。
階段を上り、滑り落ちる。それを無言で5回繰り返した。横には、親のように見守る早坂さん。なんなんだ、この絵は。
滑りながら周りを注意して見るが、ソレらしきものは見当たらない。
いい加減いたたまれなくなって、ブランコへ移動した。
2人並んで、ゆる〜くブランコを漕ぐ。
「・・・出ませんね」
「そうねえ」
「楽しみ方が足りないのかな」昔わたしが見たあの子は、はしゃぐ子供達の近くで楽しそうにジャンプしていた。
「もっと楽しそうにしてみたら?」
「んな無茶な・・・」
早坂さんはブランコから降りると、わたしの後ろへやってきた。
「しっかり握ってて」
そしてわたしの座板を掴み、後ろに引き上げ、離した。
「おおっ!」何度か背中を押され、あっという間に高く舞い上がった。そのまま助走をつけて思い切りジャンプした。着地、パーフェクト。
「おおー、凄い!かなり飛んだわよ」
「これも負けた事ないです」
段々、楽しくなってきた。今度は立ち漕ぎをしてみる。限界まで勢いをつけ、大ジャンプを決めた。つもりが──あらっ?思いのほか飛びすぎて、空中でバランスを崩した。着地の際、咄嗟に身体を捻りながら前転し、衝撃を和らげた。
ある意味、パーフェクト?
「ちょっと大丈夫!?」早坂さんが駆け寄り、わたしを立たせた。わたしの代わりに服についた土をパンパンと叩く。
「あービックリした」
「こっちのセリフよ!ヒヤヒヤさせないでちょうだい・・・飛びすぎよ!」
「でも、楽しいな。もっかいやっていいですか」
「ダメよ!」
「・・・着地決めたいんだけどな」
「体操選手じゃないんだからやめなさい!むしろ、着地に関しては10点満点よ」
「空中でバランス崩しちゃって、危なかった」
「よく受け身取れたわね。もしかして初めて?」
「はい、身体が勝手に動いてました」