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「あたし達よ」
「どうやって」
「なんでもあるじゃない。ブランコに滑り台に鉄棒に、──こうやって見ると、ないわね」
「いい大人が滑り台ってか。それこそ不審者だろ。俺はやらんぞ」
「まあ、あたし達ではそうなるかもしれないけど・・・」
早坂さんがニコリとわたしを見た。
「えっ」
「可愛い子がやったら問題ないわよ」
「わたしもいい大人ですが」
「言葉通り大の男が遊んでる姿、見たい?」
2人が滑り台を滑る姿を想像しかけて、すぐに消し去った。
「わたしがやりますかね・・・」
「ふふ、じゃあ何からやる?」
なんか、楽しそうなんですけど。「あの鉄棒、昔はもっと低かったんですよね」
「雪音ちゃん、逆上がり出来る?」
思わず、溜め息が出た。「愚問ですよ?」
早坂さんがニヤリと笑った。「お手並み拝見ね」
「俺は座ってる」そう言い、瀬野さんは辺りを見回しながら隅にあるベンチへ移動した。
鉄棒は2段階の高さになっている。高いほうは2メートルくらいあるので、低いほうの鉄棒で華麗に一回転を決める。
「おおー、凄い」
早坂さんから拍手を頂いた。「大袈裟な。これくらい誰だって出来ますけど」
「あら、そんな事ないのよ?無駄な動きもないし、この高さで軽々とやってのけるんだから大したもんだわ」
そこまで言われると、悪い気はしない。
逆上がりなんて、中学生以来だろうか。身体は覚えているものだ。
ふと、思い出した。あれって、どうやるんだっけ。
「雪音ちゃん?」
高いほうの鉄棒にぶら下がり、片足をかけ、スイングの勢いで上に上がる。そのまま怖気付かず、勢いをつけて後ろに回転だ。思ったより勢いがつきすぎて3回転くらいしてしまったが、成功した。
「ふぅ・・・ヤッタ」
わたしを見上げる早坂さんは、ポカーンとしている。
「なんとまあ・・・お猿さんみたいね」
「昔、友達と何回転出来るか競争してたんですよ」
「負けた事ないでしょ?」
「1回も」
早坂さんはクスクスと笑いながら、わたしの真下へやって来た。
「・・・あの、下りるんで退いてください」
「受け止めてあげるわ」笑顔で手を広げる。
「いりません。自分で下りれます」
「いいから、ほら。腕が疲れるわよ」