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「それで、何があったの?早坂さんに振られた?」
「・・・え」
春香が、わたしを睨んでいる。「反抗してこないところを見ると、よほど重要な事なのね。何があったのよ」
「・・・そんなわかりやすい?わたし」
「バカじゃない限りわかるわ」
「そうか・・・」
「さっさと片付けて飲みに行くわよ」
「えぇー?賛成」
「はーい、俺も行く行く」
そういえば、今日は店長のタバコに文句を言ってなかったな。
「今日は従業員としてなので、営業体制や賃金の話をしようと思うのですが、店長もご一緒しますか?」
よくもスラスラと出てくるなと感心したが、普段から春香が言っている事だった。酔っ払った時に。
「遠慮しときまぁす・・・」元々の撫で肩の店長が、肩を落とす。
「それは半分冗談だとして。今日は、女同士で話したい事があるんですよ。店長に奢ってもらえないのは残念だけど、次の楽しみに取っておきますね」
フォローになっているのか疑問だが、店長は親指を立てているから、グッドなんだろう。
近所の居酒屋に移動し、とりあえずビールで乾杯する。
「お疲れ〜〜」
春香はいつも通り、手品かという早さで1杯目を飲み干した。
「最初から2杯頼んどけば?」
「ぬるくなるでしょ」
「ならないと思う。絶対」
「それで?早坂さんと何があったの?」
だから、なんでいつも早坂さんが最初に出てくるんだ。「早坂さん関係ないし」
「え、そーなの?てっきり恋煩いかと思った。心ここにあらずで溜め息ばっかりついてるし」
「恋煩いって・・・」
「じゃあ何よ?」
春香のおかわりビールとチーズの盛り合わせが届き、1つ、つまむ。
「春香だったらさ、小学校の時、喧嘩別れした友達から今になって会いたいって連絡来たら、どーする?」
「喧嘩別れ?」
「向こうが転校したの」
「・・・悩みって、そんな事?まあいいわ、喧嘩の内容は?」
余計な事を口走るな、わたし。「・・・2人で公園で遊んでる時にね、向こうがジャングルジムから落ちて怪我しちゃって。それをわたしが落としたと思ってて・・・違うんだけど。そっから口利いてくれなくなっちゃって」
「なんでアンタのせいだと思うわけ?」
「・・・わかんない」としか、言いようがない。未来ちゃんが何かに引っ張られたという話は、ややこしくなるから言わない。