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「じゃあ、わたしはここで。店長、春香にあんまり飲ませないでくださいね」
「それ、俺に言う?」
「一真くん、またね」
「お疲れ様です。雪音さん、約束、忘れないでくださいね」
「ん?ああ、オーケイ」
車に向かいながら、早坂さんが後ろを振り返った。「この前は、いなかった子よね」
「あ、はい、今日からバイトに入った子なんですよ。店長の知り合いの甥っ子さんで」
「ふうん。約束って?」
「え?」
「さっき言ってたじゃない」
「ああ、これから歓迎会なんですけど、わたしは行けないんで、後日行こうって話です」
「2人で?」
── これは、過保護モードか?職場の人間にまで?「わかんないですけど」
「ふうん」早坂さんはそれ以上何も言わず、わたしを助手席へと案内した。
例の公園までは、30分程かかるという。市街地を抜け、車通りが疎らになってきたところで、早坂さんの携帯が鳴る。
「須藤よ。スピーカーにするわね。もしもし?」通話中になっているのに、何も聞こえてこない。「須藤?」
ガサガサと雑音が入り、「あ、早坂さん?今何処ですか?」
「向かってるところよ」
「瀬野さんも?」
「ええ、どうしたの?」
「・・・すんません、ヘマしちまいました」
「どーゆうことだ?」座席の間から瀬野さんが顔を出した。
「偵察に行ったんですが、不意を突かれて、高野が襲われて・・・今病院に向かってます」
早坂さんの顔が険しくなる。「怪我は?」
「かなりの力で突き飛ばされて全身を打ったんですが、意識はあります」
「なんでまた行ったんだ?俺達が行くって言っただろう」
「・・・前回なんにも出来ずに逃げちまったんで、少しでも力になれればと思って」
瀬野さんが呆れたように息を吐いた。「それで、何を見た?」
「・・・すみません、動きが速くてはっきりと確認は出来なかったんですが、やはりかなりの巨体で、地面を這って移動する何かが、確実にあそこにいます」
「大蛇の可能性はあると思う?」早坂さんの声は冷静だ。
「・・・断言は出来ませんが、可能性はあるかと」
「わかった。とりあえず、あたし達が向かうから。後で報告入れるわ」
「わかりました。気をつけてください。これまで見てきた奴とは比べ物にならないデカさです」
「了解」