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「雪音、龍慈郎には会ったが?」
「あ・・・はい」ここで、財前さんの名前が出るとは思っていなかった。
「この前、財前さんちに行ってきたのよ。ね?」
「蛇の呪いの話は聞いだが?」
「はい」
「殺してけろって言われだが?」
「・・・はい」
「ガッハッハ!オメエの思った通りだったな、遊里!」
「言ったでしょ、あたしの目に狂いはないって」
──全然、笑えないんですけど。
「龍慈郎は、認めた人間にしかそれを言わねーがらな。おなごのくせに、よっぽど肝が据わってんだべ!」
「あれから何も話が入ってこないが、進展はないのか?」瀬野さんはいつの間にか、食事を全部平らげている。
「そうねえ、ここ最近はこれという目撃情報はないみたい。ただ、偵察してた須藤(すどう)から、ここから北にある森林公園で、巨大で胴体の長い何かを見たようなって報告があったわ」
「・・・見たような?」
「ええ、暗かったし、すぐに逃げたからよくわからなかったらしいわ」
「逃げたって、どっちがだ」
「須藤たちよ」
「あいつらは、ただ逃げて来たのか?」
「しょうがないわよ。財前さんじゃないけど、自分の身を守ること最優先よ」
「財前さんには?」
「言ってないわ。確信もないし、ぬか喜びさせたくないしね」
「胴体が長いっていうのが気になるな。行ってみるしかないな」
「わたしも行きます」
── 早坂さん、瀬野さん、おばあちゃんの順番で目が合った。
3周したところで、「ガッハッハ!そうが、行ぐが!」
「・・・雪音ちゃん、ごめんなさい。話がわからなかったわよね」
「なんとなく、わかりました。わたし達のように見える人間がいて、その蛇を捜していて、その森林公園で、それらしきモノを見かけたって事ですよね」
「そうだ」すぐに応えてくれたのは瀬野さんだ。
「まだわからないわ。勘違いかもしれないし、確信はない」
「だから、それを確かめに行くのでは?」
「そうよ。でも、あなたが行く必要はないわ」
「なんでですか?」
早坂さんの目が、険しくなる。「あなたが思うより、危険なのよ。人間の目につかない所に隠れている奴らは警戒心も強いから、何をしてくるかわからない」