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早坂さんは大袈裟にシュンとして見せた。「雪音ちゃんまで・・・あたし、今日は枕を濡らすわ」

「汗でか?」

「おだまり!」

「でも、わざわざありがとうございます。近いのに」

最後の強調部分を聞き流し、早坂さんはふふっと笑った。「じゃあ、次も迎えに行くわね」

──・・・次?

「ところで中条、その場所は何処だ?」

「あ、もう少し行った所です」


──2人のデカい男に挟まれて歩くと、威圧感が凄い。なんというか、連行されてる気分だ。

「あれ・・・何かしら?」

「え?」早坂さんを見上げると、目を細めて遠くを見ている。その視線を追うと、川の水面に水しぶきが上がっているのが見えた。
わたしの唯一の取り柄は、体力と視力。

気づいたら、その場を駆け出していた。

「雪音ちゃん!?」

「彼女!」そう言うのが、やっとだった。
後ろで、2人が何か騒いでいる。
それより彼女、彼女を助けなきゃ、──あれは、なんだ?もがき苦しむ彼女の首に、緑色の何かが巻きついている。

わたしは勢いに任せて川に飛び込んだ──はずが、物凄い力で引き戻される。一瞬、空を飛んだ。落ちる衝撃がなかったのは、瀬野さんが受け止めてくれたから。

「遊里!」

「えっ・・・」

瀬野さんが目で追うのは、溺れている彼女。早坂さんの姿がない。
まさか──立ち上がったわたしの腕を、瀬野さんが掴んだ。

「駄目だ。ここにいろ」

「でも、早坂さんが」

次に見た時、彼女の姿は消えていた。いつも通りの穏やかな水面。

「うそ・・・」彼女は・・・早坂さんは?
動こうとする身体を、佐野さんが押さえる。

「いいから待て」

──実際は、数秒だったと思う。わたしには恐ろしいほど長く感じた。

水面に、浮かび上がる影。それは、水しぶきと共に、姿を現した。
金切り声を上げ、水中に向かって抵抗している。身体の造りは人間に見える。全身が緑色で、左右に平たい顔。真ん丸なギョロっとした金色の目。耳の部分には大きなヒレ。

「半魚人か」瀬野さんが言った。

そいつは、上半身を捻らせ必死に逃げようとしていた。水中の何かに捕らえられている。
そして次の瞬間、水中に姿を消した。

辺りが、静まり返る──。
















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