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「危機感、ですか」

「どんな人かわからないでしょ。本当に危ない人だったかもしれないし」

「まあ、女性だったっていうのもあるし、"人間"だし・・・」

沈黙に包まれる。「・・・あなたは妖怪の前に人間ね。どうすればいいかしら」声のトーンが、完全に独り言だった。

「あの・・・」

「まあ、それは一旦置いといて、明日その場所へ行ってみるわ」

何を、一旦置くんだ。「わたしも行きます。彼女に、あそこには近づかないように言ったんですけど・・・」

あの様子では──「言う事聞かなさそう?」

「はい。たぶん、また行くと思います」

「わかったわ。じゃあ、明日の10時にその近辺で落ち合いましょう」

ふと、頭に浮かぶ疑問。「お仕事は大丈夫なんですか?」

「ん?ええ、基本自由だから大丈夫よ」

── 基本自由な仕事って、なんだろう。カフェで会った時も、昼間だったし。
まさか、無職?いや、でも立派な車に乗っていたし。

「おーい、雪音ちゃん?」

「あ・・・わかりました。じゃあ明日の10時に」





そして、翌日──。
家を出て、すぐに気づいた。あのデカい後ろ姿は・・・「早坂さん?」

私に気づき、手を上げる。「雪音ちゃん、おはよう」

「・・・どうして家の前に?」

「早く着きすぎちゃってね。迎えに来たの」

「はあ・・・」すぐそこなんだが。

「行きましょうか。瀬野も来てるわよ」

「えっ!瀬野さんも?」

──あの人も、基本自由な仕事なんだろうか。・・・・・謎だ。

今日の早坂さんは、白いTシャツに黒いパンツ。足元はスニーカーだ。服装は至ってシンプルなのに、なんでこんなに人目を引くんだろう。

早坂さんが足を止め、振り返る。「なんで後ろ歩いてるの?歩くの早かった?」

「いえ、そうじゃないです・・・」並んで歩くと自分も見られてるような気がして、気が引ける。

「疲れてるなら抱っこしてあげるわよ?」

「結構です」

気後れしながら隣を歩く。早坂さんはさっきよりゆっくりになった。別に、早くても大丈夫なんだけどな。

「良い所ねえ。癒されるわ」

「ですよね。わたしも此処が気に入って、今の家に決めたんです」







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