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「見た目のこともだけど、財前さんに聞きたいことはあるかって言われた時、あなた、無いって言ってたじゃない」
「ああ・・・」あの時は、本当にそう思った。「実際、聞いても理解出来なかったと思うし、だったら無理にわかろうとしなくていいかなって。財前さんがどんな人でも関係ないって思ったんです。あ、投げやりって意味ではないですよ」
早坂さんは前を見ながら、わたしの頭に手を置いた。「わかってるわよ」──大きい手が、帽子みたい。
「おいセクハラ野郎」瀬野さんが、座席の間から顔を出した。「なんでこんなにノロノロ運転なんだ」
「雪音ちゃん乗せてるんだから、安全第一よ!そしてセクハラはやめてちょうだい!」
「にしたって、遅すぎるだろう。もっと飛ばせ、眠くなる」
「あんたは少々の事じゃ死にはしないだろうけど、彼女こんなに小さいのよ。石にぶつかっただけで死んじゃうわ」
まず、車のメーターは普通に80キロを超えている。そしてわたしも日本成人女性の平均身長を超えている。そして石にぶつかっただけでは死なない。
まあ、この2人の基準はアテにならないということだ。
「2人とも大きいですよね。身長何センチですか?」
すぐに答えが返ってこなかった。「さあ?何センチかしら」
「俺も知らん」
「・・・自分の身長、わからない事ってあるんですか」
「学生以来、測った記憶がないわ。覚えてる限りでは180だったかしら」
「俺もそんな感じだ」
この2人の、普段の生活が見てみたい。「いや、もっと大きいと思いますよ」
「そうかしら。雪音ちゃんは?」
「167です」
「あらん、おチビちゃんね」
子供の頃から、常に平均身長を上回ってきた。今日は、おチビちゃんと言われる最初で最後の記念日に認定した。
「・・・あの、1つ聞いてもいいですか?」
「どーぞ?」
財前さんは言った、自分を殺す覚悟を持ってほしいと。わたしなら、それが出来る、そうしなければならないと。
「どうして、わたしを財前さんに会わせたんですか?」