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「雪音ちゃん、勘違いしてほしくないんだけど、財前さんがあなたにあんな事を言うなんて、思ってなかったのよ」車のスピードが、少し落ちた。「あなたを連れて行ったのは、正直、それが1番手っ取り早いと思ったからなの」わたしの反応を見ながら、早坂さんが続けた。「世の中には、あたし達のように奴らが見える人間はたくさんいるわ。でも、奴らに対処できる人間はそういない」

「わたしは、出来る・・・と」窓の外を見ながら言った。

「そうよ」

「その基準って、なんですか」

「能力的な事もだけど、何より大事なのは精神力ね。財前さんを前にして、あなたは怖気付かなかった」

「・・・怖かったですよ」最初に目が合った時、本当は逃げ出したかった。

「それでも、十分堂々としてたわ。財前さんは、あなたのような人を求めてるの。どんな妖怪にも怖気付かず、立ち向かえる人を」

「それは・・・財前さんに対してもってことですか」

車が減速し、早坂さんは車を道路脇に停車させた。シートベルトを外し、わたしに身体を向ける。

「雪音ちゃん、ごめんなさい。あなたを財前さんに会わせたのは、あたしのわがままでもあるの。──あたし達は、あの人を救いたい。でも、本人は少し諦めかけてるというかね・・・自分を制御出来なくなるのを、何より恐れてるのよ。でもね、あなたに会って思ったの。この子なら、財前さんを救えるんじゃないかって。救おうとしてくれるんじゃないかって」

「・・・どうしてですか?」

早坂さんの笑顔は、いつもより控えめだ。「なんでかしらね。あなたの言う、本能っていうやつなのかしら。事実、あんなに笑った財前さんは久しぶりに見たもの」早坂さん手が、わたしの頬にソッと触れた。「雪音ちゃん、何の説明もせずに連れてってごめんなさい。あなたには、酷かもしれない・・・でも、あたし達と一緒に財前さんを救ってほしい」その目は真剣で、逸らすことが出来ない。「協力してくれる?」

「・・・わたしは言いました。財前さんを助けたいって」

早坂さんは、ニッコリと微笑んだ。そしてもう片方の手でわたしの顔を包む。「ありがとう」

「・・・おい」

「ギャ──!!」

「キャ──!!」


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