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「じゃあ、財前さんとこで落ち合いましょう」
「了解」
「あの、その財前さんって」
オネエはニコッと笑った。「会ってからのお楽しみ」
「はあ・・・」
それ以上は何も聞けず、その場はお開きとなった。自分のコーヒー代を払おうとすると、オネエにまた、めっ!と怒られた。お兄さんには甘えなさいと。瀬野さんのツッコミが入ると思ったけど、そこは何も言わず、自分も便乗していた。
店を出て別れたあと、少し歩いてから振り返ると、オネエもこちらを振り向いた。
笑顔で手を振られ、わたしも振り返す。遠目で見ても、やっぱり2人は目立つ。本人達は気づいていないようだが、すれ違いざまの人がみんな振り返って見ている。──やっぱり、デカいからか?
家に帰って、すぐに袋からナイフを取り出した。意味もなく、宙にかざす。銀細工で出来た持ち手の部分には植物のような模様が彫られている。長さは10センチ程で、確かに手に馴染む。扱いには十分に気をつけなさいと言うオネエの言葉を思い出しながら、慎重に刃を開く。
カチッと音がして、しっかりと固定された。
持ち手と同じように、刃も細い。幅は1センチくらいだろうか。瀬野さんが見た目より遥かに丈夫だと言っていたけど、なんとなくそれがわかった。
目を閉じ、これで何かを突き刺す自分の姿をイメージする。
けどやっぱり、どうしても、その場面を思い浮かべることが出来ない。
「ふう・・・」説明を受けた通りに、ロックを解除するボタンを押して、刃を収める。
この先、コレを使う時が本当に来るんだろうか──。