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護衛の仕事2

 二日後。
俺とレンジは仕事現場にいた。
背後には無駄に立派で高さのある建物がある。

この建物の中で今日、魔法兵器開発計画についての会議があるらしい。

「よく考えたら、俺たちみたいな人間に護衛を頼むなんて、相当後ろ暗い事情があるんだろうな」
レンジは自分の持ち場を離れて俺の元に来ていた。

「持ち場に戻れ」
「いいじゃねぇか。俺の持ち場ってすぐそこだぜ? ほら、こっからも見える。あの街路樹のとこだ。で、カブトはどう思うよ。依頼主さんは結構悪い奴だと俺は睨んでるんだが」

「それはそうだろう。仲介屋の持ってくる仕事はどれも非合法的なものだ。当然依頼主も真っ当な人間じゃない」
とか言っている間に、徐々に現場に緊張が満ちていくのを感じた。

権威を見せつけるように黄金に輝く四輪馬車がぞろぞろと到着し始めた。

「さて、お出ましだ。仕掛けてくるかな?」
レンジが銃を取り出した。

レンジの銃は特別製で、銃自体に魔力を込めることでエネルギー弾を撃つモードと実弾を撃つモードを切り替えることができるらしい。

エネルギー弾は相手を気絶させる程度の威力で、殺傷能力はないようだ。

俺も武器を構える。
俺の武器は使用者の魔力を動力源にして電流が流れる棒だ。

たくさん魔力を込めれば人を殺せるほどの電流を流すこともできる。

「お、やべぇ。ほんとに来たじゃん」
レンジが声を上げる。

四輪馬車から降りてきた護衛対象を取り囲むように人が集まっていく。

要人の兵器開発に反対する、例の平和主義暴力集団だ。

何人もの屈強な護衛に阻止されて要人に近づくことはできていないが、良くない状況だ。

今はまだ取り囲んでいる者たちも暴力を行使していない。
しかしそれが始まればこの場は滅茶苦茶になるだろう。

何かきっかけがあれば、すぐにでも戦闘が始まる。
そしてそういうのは案外、たった一人の行動によって引き起こされるものだったりするのだ。

要人の周りにいた護衛のうちの一人が、平和主義者の一人を取り押さえた。

そいつは激しく抵抗し、手に持っていた何かを投げた。
誰かが怒鳴るように叫ぶ。

「伏せろッ!」

少し離れていた場所にいた俺たちも目を瞑った。
直後、まぶたを突き抜けて光が届く。

どうやら投げられたのは爆発物ではなく、閃光弾だったようだ。

光が消失した後、薄く目を開いて要人たちの方を見ると、護衛たちは不機嫌そうに口元を歪めながら平和主義者たちを蹴り飛ばしていた。

暴力を振るわれた方も、当然やり返す。
始まった。
戦闘だ。

「俺たちも行くぞ」
「おう」

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