護衛の仕事
仲介屋の男から詳しく話を聞いた後、俺とレンジは事務所を出た。
「成功報酬、とんでもねぇ額だったな。やっぱ相当危ねぇんだろうな。そのギフトって組織は」
隣を歩くレンジが言ってきた。
「怖いのか?」
「まさか」
「足を引っ張るのだけはやめろよ」
俺はレンジに釘を刺した。
レンジは
「はいはい」
と適当に返事した。
俺はこの男のことを信用していない。
胡散臭いにもほどがある。
「で、これからどうするんだ?」
レンジが訊いてくる。
「仲介屋が寄こしてきた仕事をやる」
「どっちのことだ? ってのは愚問か。ボディガードの仕事の方だろ?」
「ああそうだ」
仲介屋は二つ仕事を持ってきた。
一つはさっきから言っているが、暗殺組織ギフトの調査。
そしてもう一つは要人の護衛だ。
そのVIPはどうやら魔法兵器の開発を推進しているとかなんとかで、平和を望む連中が暴力に訴えかけて兵器開発を止めさせようとすることが日常茶飯事らしい。
仲介屋は今日、俺にギフトの調査以外の仕事を依頼する予定ではなかったのだが、俺がもう一つ仕事を寄こせと言った。
信用のならない者と共に危険な仕事をするのは避けたい。
だからまず、他の仕事をこなしながらレンジが信用に値するか見極めるのだ。
ギフトの調査に取り組むのは、もう少しレンジの様子を見てからにする。
「カブト、あんたの考えは分かるぜ。俺がどういう奴か確かめようってんだろ?」
「……」
「ハッ。その顔は図星だな。まぁでもそれは当然のことだ。申し訳なく思ったりしなくていい」
「そんなこと、思っていない」
「そうかよ。それにしても、どこの誰とも分からねぇ奴らに自分の護衛をさせるなんて、そのお偉いさんってのも案外不用心だよな。その護衛に敵が紛れてたらどうするんだっての」
「俺たちは依頼主に手が届く距離まで近づくこともないだろう。その距離には信頼できるボディガードを配置しているだろうからな。俺たちは建物周辺なんかに割り振られるはずだ」
「そんなバカ真面目に返すなよー。ちょっと愚痴ってみただけじゃんか」
レンジはつまらなそうに口笛を吹いた。