エピローグ ダイエットは明日から!
「まったく、また目を離したすきに食べてるんですか⁉」
厨房に隠れていた私を見つけたシェナは、大きな声を上げた。
あ、見つかった。
「いや、食べてるんじゃなくて……。ほら、作ったものの試食よ」
何度かの失敗を重ね、きちんとご飯の形になったものをシェナに見せる。
米を炊くって、結構大変だったのよね。
火加減もだし、その前の精米にかなり手こずっちゃって。
ずっと雑炊しか出来なかったから、ご飯うれしい。
おむすびを作ろうとしたところを見つかってしまったんおだ。
「でも食べるんですよね」
「これ、カロリー低いもん」
「またそんなこと言って……。そんなことだから、初夜がまだ迎えられないんですよ」
「あーーー。それ言う? 気にしてるのに」
そう。
シェナの言う通り、あれから一か月ちょっと経過したものの、私たちはまだ初夜が出来ていない。
「だってそれはランド様がかたくなに譲らないからでしょう?」
どうしてもお姫様抱っこして、ベッドに私を運びたいっていうのは譲れないらしい。
私は何度も大丈夫だって言ったんだけど。
これは女性の夢だから、我慢しなくてもいいんだって。
まぁ、夢は夢だろうけど。
それよりも初夜の方が……なんて、さすがに恥ずかしくて言えなかったのよね。
「ランド様が譲らないのでしたら、ダイエット成功させればいいじゃないですか」
「だからほら、ダイエット食」
「絶食してください」
「えーーー。それはヤダよぅ」
いやまぁ、初夜と比べたらダメなのは分かってるけど。
ダイエットって無理しちゃ意味ないと思うのよね。
リバウンドしちゃうし。
「大丈夫よ、食べて痩せるから」
「そういうのがデブの発想ですね」
「ちょっと、もぅすこし包んで言って」
「包むって……」
「白豚令嬢って言ってよぉ」
「同じじゃないですか」
ちょっと違うんだもん。
デブより、ほんの少し可愛いじゃない。
「まったく……奥様の道は遠いですね」
「やだぁぁぁぁぁ。明日から、ダイエットはちゃんと明日から頑張るからぁぁぁぁぁ」
私の叫び声と、みんなが笑う声がまじる。
小窓から日は注ぎ込み、どこまでも高い空には雲もなく、どこまでも平和な一日が過ぎていった。