私たちがやる
その女は、彼の帰りを狙ってマンションの物陰に隠れていた。
あいつの帰宅を待ち構え、あいつを見たらバッと飛び出して、手にしたナイフで一刺しにする気のようだ。
「あいつをやるのは、私たちよ」
と、怨霊と化していた私たちが、その女の周りをうろつくが、生者に幽霊は見えない。
「くそ、この、あいつを恨んでいるのはあんただけじゃないのよ」
「そうよ、あんたに独り占めさせない」
復讐をしたくて、私たちはあいつのそばをうろついていたが、怨霊となっても今日まであいつは図太く生きていた。幽霊が人を呪い殺せるのは、映画の世界だけのようで、ポルターガイストも、あいつの夢の中でさえ、死人の私たちは何もできなかった。
だから、いま生者に復讐を取られそうで悔しかった。だが肉体のない私たちはその復讐者を見ていることしかできなかった。
そして、女たらしのあいつが現れ、その女は彼を襲った。が、傷を負いながらも彼は反撃し、ナイフの取り合いとなり、奪い取ったナイフで、その女を刺して、彼は生き延びた。
それから、反撃されて死んだ彼女は私たちの仲間となり、いまは何もできない幽霊として彼の周りを恨めしそうにうろついていた。