ホラーのお約束
しつこく私を狙う殺人鬼を捕まえてみたら、友人だった。ホラー映画でよくある、意外な人物が、真犯人だったというやつだ。
「なんで、私を狙ったの?」
動揺しつつ、冷静に彼女に詰問する。
「そんなの、簡単にやられそうにない相手だと思って狙ったのよ。何ごとも、簡単に達せられるより、苦労して成し遂げた方が達成感が強いでしょ?」
「そんな理由で、この私を狙ったの?」
「それだけじゃなくて、自分が、どこまで冷淡に人を殺せるのか、試してみたかったのよ」
「まさか、たかしを殺した理由も、自分の礼酷さを試すため?」
「ああ、あいつね。そうね、自分の冷酷さを知りたかったのよ。どこまでひどいことができるのか。で、あいつ、犯人が私と知って、すごく見苦しく命乞いしたわ。知り合いだから、助けてもらえるかもって思ったんでしょうね。普段イケメン気取ってるくせに、あの時の見苦しさを、あんたにも見せてあげたかったわ」
私は、たかしの遺体を思いだして、彼女に対する怒りがぶわっとこみあげてきた。
「じゃ、私も、友人をどこまで残酷に殺せるか試していいわね」
「ああ、そうね、わたしたち、趣味の合う友達だもんね」
そうして、私は、彼女を殺してみた。面白いのは、さすがの殺人鬼も自分の死の恐怖は耐えがたいらしく、途中惨めに命乞いしたが、たかしの無念を晴らすように私は彼女を惨殺した。