着せ替え人形
「あ、ごめん、人違いだった」
「なに? ナンパのつもり?」
「いや、君の後ろ姿が知り合いに似てたからさ、つい」
「後ろ姿を間違えたってこと? そんなに似てたの?」
「ああ、後ろ姿がね。本当にそっくりだったんだ、ごめん。彼女は、もう死んでて、ここにいるわけないんだ、情けない」
「情けないことないわよ、それだけ、彼女のことを愛してて忘れられないってことでしょ、素敵じゃない」
「でも、いま君のしているマフラーとそっくりなのを彼女も持ってたんだ」
「ふ~ん、後ろ姿だけでなく、マフラーも似てたか。駄目ね、首のつなぎ目を誤魔化すのにちょうどいいと思ってくすねてきたんだけど、ちょっと欲張りすぎたみたい」
「くすねてって、それって、まさか・・・」
「そうよ、これ、本当はわたしのじゃないの、こうして、首のつなぎ目の傷を隠すのにちょうどいいかなっていただいちゃったの、まさか、それで、気づかれるなんて」
「うっ、な、なんだよ、その首の傷は・・・」
「あなたの彼女の肉体をいただいて首をすげ替えさせてもらったのよ、冬は死体が長持ちで交換の手間が省けて楽なんだけど、まさか、マフラーと後ろ姿から足がつくとはね」
「お、お前、まさか、彼女の身体を・・・」
「そういうこと、悪いけど、私の秘密を知られたからには・・・」
「な、なにを・・・」
「心配しないで、死体の処理には慣れてるから。髪の毛一本無駄にしないから」