ご招待
次の日。
土曜ということもあり、一日中部屋で本を読んで過ごすつもりだったのだが、インターホンが鳴ったことでその予定は変わった。
家族が全員出払っていたため、仕方なく僕がまぶたを擦りながら玄関まで行って扉を開けた。
そこには鷹祭さんがいた。
「よっ」
彼女は軽く手を挙げて挨拶してきた。
僕は彼女の頬をつねった。
「痛い痛い! なにするの!?」
「いや、夢かと思って」
「だったら自分の頬をつねって。やってあげようか?」
「遠慮しときます。遠慮するってば……。痛い痛い! 痛いって!」
彼女は満足げに手を離した。
僕は頬を手で押さえながら訊いた。
「で、なにか用? 昨日忘れ物でもした?」
「ううん。昨日言ったでしょ? 今度は私の部屋にご招待するって。今から遊びに来てよ」
「早すぎない!? 昨日の今日だよ?」
「まぁいいじゃないか。善は急げだよ」
「急いては事を仕損じるよ」
「思い立ったが吉日だって」
「急がば回れ」
「いいから行こうよ〜遊ぼうよ〜」
彼女は僕の手を掴んで引っ張った。
「ちょ、早い早い。待って。せめて着替えさせて。今パジャマだから」
「もうお昼だよ? まだ寝てたの?」
「休日なのに早起きなんてもったいないことするわけないじゃん。今まさに起きて着替えようとしたタイミングでインターホンが鳴ったんだよ」
「ふーん。まぁなんでもいいけどさ。じゃあ着替えてきていいよ」
彼女は僕の手を離した。
僕は部屋で着替えを済ませ、玄関に戻った。
靴を履いて二人並んで外に出る。
「それじゃ、レッツゴー」
彼女は前方を指差しながら歩き出した。