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遺言ごっこ

私たちは、とても仲が良かった。彼女が、親の都合で私と同じ高校に行けないと悩んでいたのも知っていた。確かに私も、彼女と別々の高校になるのは辛い、けど、仕方のないことだと思う部分もあって、その彼女の提案に内心でギョッとした。一緒の高校に行けないのなら、二人で一緒に死のうと言い出したからだ。さすがに、それはと思ったが、口に出して強く否定はできなかった。一緒に遺書を書こうと言われ、ま、遺書を書くだけ書けば気持ちも落ち着き冷静になって彼女の気も晴れるだろう、いざとなったら強引に思いとどまらせてごっこで終わらせればいいやと、私は彼女に付き合って遺書らしき、真似事の手紙を書いた。
「どうやって、死ぬの? 私、痛いのは嫌だな」
とさりげなく、死ぬのに抵抗があることを私はアピールした。すると、彼女は、
「大丈夫、苦しまずに死ねる薬をネットで買ったから」
と笑顔で、持っていた錠剤の入ったガラス小瓶を見せた。あ、この子本気だ。
何となく、私は、この子と一緒に死ぬのも、ま、いいかと思ってしまった。
一応、私も彼女のことを親友だと思っているし、これから先、彼女以上の親友に出会えるか自信はない。流されて、一緒に、その錠剤を飲んでふたりで横になった。が、数時間後、私だけが目覚めて、彼女は目覚めなかった。警察や先生にあれこれ聞かれたが、正直にすべて話し、警察は、彼女のパソコンの履歴からその薬を売った人物を特定した。が、その人物が売ったのは,ただの睡眠薬で、自殺志願者も、死ぬ気で飲んだ薬で死ねなければ、自殺を思いとどまるだろうと偽物を売ったのだと自供した。つまり、彼女は毒を飲んだという思い込みで死んだのだ。もちろん、ぐっすり寝ただけの私は、彼女の後を追って死ぬ気はなく、高校に進学して、新しい友人を作っていた。

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