謝罪文
彼が自殺するまで担任は何もしなかった。彼が自殺して、いじめを苦に自殺したらしいという噂が流れだしてから、担任は慌てて、そのいじめ加害生徒に彼に対しての謝罪文を書いて、彼のご両親に届けるべきじゃないかと、その加害生徒たちを説得しようとした。だが、加害生徒たちは、いじめていない、謝罪文は書かないと拒否し続けて、その加害生徒の親も、子供に変なことを強要するなと学校に文句をつけた。
そんなある日、教室でパニックが起きた。自殺したはずの彼が教室の一番後ろに立っているのを見たという生徒が現れ、その日から、他の生徒も、度々、彼の姿を教室で目撃するようになった。そうなって来ると、謝罪文を拒否していた生徒も自主的に担任に謝罪文を書いて届けた。
そうして、加害生徒から謝罪文を預かった担任は、その謝罪文を彼のご両親に届けた。それから彼の姿を見る生徒はいなくなったが、担任だけは、今でも彼の姿が見えていた。しかも、「先生の謝罪文は?」という彼の声も、聞こえていた。いじめを見逃していた担任を彼は一番恨んでいたのである。
その姿は、担任が学校を辞めるまで見え続けた。