アリバイあり
私は、殺したあの女の亡霊に悩まされていた。だが、誰にも相談は出来なかった。なざなら、完璧に事故を装って殺して警察だって、事件ではなく、事故として処理し、しかも、私は事件と疑われても大丈夫なようにアリバイ作りもばっちりな完全犯罪を成し遂げていたのである。それを、自分が殺した女の亡霊に悩まされていると、誰が相談できようか。
何とか亡霊に耐える日々を続けたが、さすがに半年近くも亡霊に悩まされると、耐え切れず、警察に自首した。警察に自分の完全犯罪のトリックを自供したが、トリックに使った証拠の品は、すべて処分した後で、また、あまりにも緻密で完璧すぎて、再現できず、しかも、わたしがアリバイ作りに利用した人たちは善人過ぎて、私が、その知人の女の死にショックを受けて勝手に殺したと思い込んでいると誤解し、私の無実を信じて活動し、実際、裁判も私の自供だけでは証拠不十分と裁判は私の無罪判決へと流れた、そうなると当然、私を恨む亡霊が消えるわけなく、最近は、寝苦しさで目を覚ますとくっきり首筋に絞め跡が残ることが多くなった。私は綿密な完全犯罪で彼女を殺したが、私も亡霊の手によるという現代の法では裁けないような手で殺されそうである。